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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第五回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、相手の疑問を予測するための基本的な考え方についてのお話をしました。論理思考の上でもプレゼン等の上でも、「相手の疑問を踏まえた上で」話の展開を考えることが重要ですが、相手の疑問については

1. 何をすべきか?(What)
2. どうすればよいか?(How)
3. それは正しいか?(Right)
4. なぜか?(Why)

この4つのパターンに大きく分類することができますので、もし相手の疑問がイメージしにくい場合は、まずはこれらのパターンを入口として考えてみるとよいということでした。

今回のコラムでは、相手の疑問の予測というテーマに関連し、話の展開や流れを考える上での「共通の土台」の重要性について触れたいと思います。

例えば、皆さんが上司の方から業務上の指示を何か受けることを以下の2パターンでイメージしてみてください。

1. 「この内容・クオリティ・期限で業務を仕上げて欲しい」
2. 「この業務にはこのような事情や背景があり、このような結果が期待できるので、この内容・クオリティ・期限で業務を仕上げて欲しい」

仮に、内容やクオリティの要求水準が高かったり、期限が厳しかったりする場合は、パターン1よりもパターン2の方が、より「腑に落ちた」状態で業務に入りやすいのではないでしょうか。あるいは通常の業務でも、単にパターン1の話をされるよりも、パターン2の話をされた方が、仕事をする「意義」を感じながら業務に取り組むことができるのではないでしょうか。

では、パターン1とパターン2の違いはどこにありますでしょうか? パターン2はパターン1の内容と比較して「業務に関する事情や背景」あるいは「結果のイメージ」の説明を加えているところがポイントですね。

これがまさに「相手との共通の土台」のイメージとなります。論理思考とは「Q&A」、言い換えれば「相手の立場や疑問を想定した上で、相手の納得感を得られやすいように、要点の繋がりを考えること」ですが、要点が繋がる理由を相手がより理解しやすい状況を生み出すためには、自分と相手の間での共通の「事情・状況」や「今後の展開・問題」あるいは「結果・目指す姿」などの「相手との共通の土台」を同時に示しておくことが効果的です。

話の展開や要点の繋がりを考える上での「相手との共通の土台」を考える際には、以下の2つのポイントに分けてイメージをするとよいです。

1. 状況(Situation)=事実。相手も自分も知っている既知の内容
2. 深掘(Complication)=事実や状況の展開や、想定しうる問題

まず、相手と自分の間に共通に存在する既知の事実や状況を示すことで、これからの話の展開のベースとなる現状の認識や摺り合わせを行います。その上で、事実や状況をさらに「掘り下げ(=深掘)」、そこから展開する内容や期待される結果、あるいは発生する可能性のある問題等を示すことで、要点が繋がる理由を相手がイメージしやすいようにします。

これらの「状況」や「深掘」は、相手の立場や疑問に関連する内容を意識することで、話の展開を考える上での「相手との共通の土台」となります。言い換えれば「状況」や「深掘」を明示することで、「相手からの共感」を得やすくなります。その上で、自分が本当に伝えたいこと=「答え」を示すようにすると、単に「答え」を述べる=言いたいことだけを伝えるよりは、相手も「自分事」として話を捉えることができますので、要点が繋がる理由を理解しやすくなります。

まとめますと、論理を展開する上では

1. 状況(Situation)
2. 深掘(Complication)
3. 疑問(Question)
4. 答え(Answer)

この4つの視点で話の内容を整理することで「相手との共通の土台」を明示し、相手の疑問に答えながら、自分が伝えたいこと=答えを述べていくという流れが重要となります。私はこの流れのことを、英語の頭文字4つを取って「SCQA」と呼んでいますが、このSCQAの流れをいつも意識することで、話の展開や繋がりの理由を相手がイメージしやすいような論理の組み立てを行うことが可能となります。

状況・深掘・疑問・答え=SCQAの流れを意識しながら、論理の組み立てを行うこと。これを是非意識しながら、話の構成を考えてみてください。プレゼンや企画等はもちろん、日常の一つ一つの業務についても、よりスムーズに遂行することが可能になると思います。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓