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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第六回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、相手と共通の「話の土台」を考える際のポイントをお話しました。論理を展開する上では

1. 状況(Situation)
2. 深掘(Complication)
3. 疑問(Question)
4. 答え(Answer)

この4つの視点で話の内容を整理することで「相手との共通の土台」を明示し、相手の疑問に答えながら、自分が伝えたいこと=答えを述べていくという流れが重要であり、この流れを意識することで、話の展開や繋がりの理由を相手がイメージしやすいような論理の組み立てを行うことが可能となるということでした。

今回のコラムでは、論理を展開する際のもう一つの基本的なポイントである「論点」の採り上げ方についてのお話をしたいと思います。

皆さんがプレゼンや報告・説明等を行う場合、「どこまで詳しく話をしたらよいのだろうか?」と悩んでしまうことはありますでしょうか? あるいは、逆に皆さんが話を聞く立場の場合、「この人の話は長いな」「要点がよく分からないな」「何が言いたいのだろう」ですとか、逆に「これだけで話が終わってしまうの?」等と思ってしまうことは、ありますでしょうか?

実はこのような疑問や状況に対しては、「適切な論点数」を覚えておくことで効果的に対処することが可能となります。

適切な論点数、言い換えれば「話の内容を掘り下げて説明をする際の、詳細説明の適切な数」は「3点」となります。そして、論点数については「3点」を上回っても下回っても、理解の妨げとなる可能性が高くなります。すなわち「必ず3点にまとめる」ことを目標とする必要があります。

論点数の理想が「3点」である理由は「人間の短期記憶の量」「ピラミッド構造のバランス」「論理展開との親和性」にあります。

論点数の理想が3点である一番の理由は「人間の短期記憶の量」にあります。この数字は論理思考以外でもいろいろと応用が利く数字ですので是非覚えておくことをお薦めしますが、人間の短期記憶の量、言い換えれば「説明された瞬間に覚えておくことが可能な要点数」は「5プラスマイナス2」すなわち「3つから7つ」と言われています。この短期記憶量には個人差がありますが、一般的には「3つまでであれば理解した要点を覚えておくことが出来る」ということになりますので、まずは「3点以下」に要点数を抑えることを目指す必要があります。

そして「3点以下」を目指す際に、逆に論点が「1つ」や「2つ」ではいけない理由が「ピラミッド構造のバランス」にあります。人間の思考回路の基本構造は「ピラミッド構造」であることは第三回のロジカルシンキング編コラムでご紹介しましたが、テーマからの「掘り下げ」と「各階層における網羅」を考える際に、論点が1つ(=各階層の項目数が1つ)ではピラミッド構造を構築できませんし、論点が2つ(=各階層の項目数が2つ)では「広がりが少なすぎてピラミッド構造が不安定」となり、「他に何か要点はないのだろうか」「この内容だけで結論づけてしまってよいのだろうか」等の疑念を相手に与えてしまう可能性が高くなります。

論点が「1つ」や「2つ」ではいけないもう一つの理由は「論理展開との親和性」で説明できます。論理展開の基本的な流れは前回のコラムで説明した「状況」「深掘」「答え」となります。例えば

「このような現状があり(=状況)、今後このような展開が想定されるので(=深掘)、これらの対策を行いましょう(=答え)」

というイメージですが、これをもし

「このような現状があるので、これらの対策を行いましょう」

と説明すると、対策を行う理由に対しての深掘説明が存在しないことになり、あるいは

「今後このような展開が想定されるので、これらの対策を行いましょう」

と説明すると、対策を行う理由に対しての現状説明が存在しないことになりますので、いずれにしても「現状」「深掘」「答え」の3点をカバーした例と比較すると、説得力に欠ける印象を与えてしまいます。もちろんですが「これらの対策を行いましょう」と述べるだけでは、説得力が非常に弱くなってしまうのは自明かと思います。

このように、「人間の短期記憶の量」「ピラミッド構造のバランス」「論理展開との親和性」との関係から、論点数の理想は「3点」となり、それを上回っても下回っても、理解しやすく説得力のある説明を行うことは難しくなります。実際には、論点を「正確に3点」にまとめることは非常に「頭を使う」作業であることが多いです。重複する内容があってはいけませんし、漏れがあってもいけません。何より「2つまでは思い浮かぶけれど、3点目がなかなか出てこない」というケースも、実際の実務においてはよく発生します。ですが、そこでもう一歩踏み込んで「3点目」を考え出すことで、話が非常に分かりやすくなり、相手も納得しやすくなりますので、3点をしっかり考える価値は十分にあると私は考えています。

論点は「正確に3点」にまとめること。ぜひこの点を意識しながら、話の展開を考えてみていただければと思います。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓