投稿日時:

ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十二回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の上で意識すべき「連続性」に関し、「現実」から物事を考えることの重要性についての話をしました。現在の状況とそこから想定される長期的な傾向=「世の中のトレンド」を考えると、ビジネスに限らず様々な場面でアイデアの発想に役立ちますので、常に

「現状を冷静に見つめ、そこから何が起きるかを想像してみる」

ことを心がける点が重要なポイントでした。

これまでのアイデア発想法編コラムでは主に「アイデアを発想する上でのツールや考え方」を述べてきましたが、今回からは「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法をお話ししていきたいと思います。

一人でアイデアを色々考えていると、どこかで「これ以上考えても何も浮かばない」という状況に陥ってしまう経験は皆さんもお持ちなのではないかと思います。このような場合、私自身がよく使う解決方法は、

・誰かの助けを借りる
・口に出してみる
・発想の環境を変える

この3点になります。今回はこの3点のうち、「誰かの助けを借りる」ことについての説明をしたいと思います。

そもそも、アイデアの定義とは、

「既存の要素の新しい組み合わせ」=「情報の新たな結合」

でした。従って、アイデアに煮詰まってしまう状況というのは、簡単に言えば「情報が不足しているか」「結合が見つからないか」のどちらか(あるいはその両方)が原因ということになります。

ここでのポイントは、アイデアに煮詰まる状況というのは、

「自分自身の中では」情報が不足していたり、結合が見つからない状態である

という点です。言い換えれば「誰か他の人であれば、自分自身が気づかなかった情報や、結合のヒントを持っているかもしれない」ということなのですね。もちろんですが、誰かに話をしたからといって、確実に情報や結合のヒントが得られる保証はありません。ただし、「人を選べば」何かしらのヒントを得られる可能性は高くなります。

ビジネスの現場では「人脈=ネットワーク」の大切さを感じる場面も多いのではないかと思います。この点について私は

「単なる『知り合い』ではなく、スキルセットに紐づけられた人脈」

の重要性をいつも感じています。言い換えれば「このテーマなら、この人に聞けば何かあるだろう」と想像できることが重要である、ということですね。データベースならこの人、ネットワークならこの人、Webならこの人というような技術面のスキルセットを想像できる人脈はもちろん、人事組織やファイナンス、あるいはマネジメント全般やマーケティング等のスキルセットを持つ人脈、さらには、純粋にアイデアを発想している分野、例えば私の場合は教育全般ですが、このような「特定分野」のスキルや経験を多く有する人脈をどれだけ多く持てるかが、良いアイデア発想の際には極めて重要であると考えています。

このような人脈を育てるためには、日頃からのコミュニケーションが重要です。そして、より大切なポイントは「相手にとって役立つ知識や情報を、自分自身も日頃から得られるようにしておく」ということになります。ビジネスにおいては「ギブ&テイク」が大切ですが、私自身の感覚では「ギブ:テイク=1:1」の関係よりも、「ギブ:テイク=3~10:1」くらいの方が、困った際に相手も気持ちよく助けてくれる可能性が高いと思っています。これは決して「これだけ自分も助けたのだから、相手も助けてくれるだろう」という打算的な話ではなく、相手が喜ぶ姿を想像して、情報や考え方を伝え続けていくと、相手も気づいたことを教えたくなる可能性が高くなるということになります。このような観点に基づいて日頃からコミュニケーションを図っていると、アイデアに行き詰まった状況自体はもちろんのこと、日頃のちょっとした気づき等も気軽に共有しやすくなりますので、様々な情報や結合のヒントを得られやすくなります。結果として、アイデアを深化させられる確率が高まるということですね。

まとめますと、

・自分自身でアイデアの基となる情報や結合が思い浮かばなければ、人脈を活用する
・単なる「知り合い」ではなく「スキルセット」に紐づられけた人脈を育てる
・日頃からのコミュニケーションにおいては、自ら「多くの情報を与える」ことを意識する

以上が、アイデア発想の上で「誰かの助けを借りる」際に押さえておきたいポイントとなります。

一人でアイデアを悶々と考える作業は、時として辛いものでもあります。このような場合に、困ったときに気軽に相談出来る「誰か」がいると、アイデアに繋がる情報や結合のヒントを得られる可能性が高まるだけでなく、アイデアそのものを考え出すための「モチベーション」を高めることも可能となります。「一人ではなく、みんなで考える」こと。これもよいアイデアを発想する上では大切です。最初から誰かのアイデアを拝借することを期待してはいけませんし、アイデアの骨子は自ら考えるべきですが、他人の視点も組み合わせることで、アイデアはより深化させることが可能となります。参考にしていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓