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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十三回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の際に生じうる「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法についてのお話をしました。

アイデア発想の上で、行き詰まりを感じた際には

・誰かの助けを借りる
・口に出してみる
・発想の環境を変える

この3点が有効であり、中でも「誰かの助けを借りる」ことは、アイデアに繋がる情報や結合のヒントを得られる可能性が高まるだけでなく、アイデアそのものを考え出すための「モチベーション」を高めることも可能となるので、意識したいポイントでした。そして、誰かの助けを借りることについては、

・自分自身でアイデアの基となる情報や結合が思い浮かばなければ、人脈を活用する
・単なる「知り合い」ではなく「スキルセット」に紐づられけた人脈を育てる
・日頃からのコミュニケーションにおいては、自ら「多くの情報を与える」ことを意識する

以上の点を押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、アイデアに行き詰まってしまった場合の2番目の対応方法として、「口に出してみる」ことの有効性についてお話ししたいと思います。

口に出してみることの効用は、大きく分けて

・情報整理の円滑化
・発想自体の活性化
・周囲へのアピール

以上の3点となります。

まず、口に出してみること=「発声」について、それ自体が脳の働きを活性化させることは「脳トレ」で有名な東北大学の川島教授も始め、様々なところで研究・発表されています。私自身もアイデアに行き詰まったときはよく、ソファーに寝転んでリラックスしながら「ああでもないこうでもない」とぶつぶつ「独り言」を言っています(このとき、周りに誰かいる場合は「これから独り言をぶつぶつ言うから、気にしないで」と一言伝えておくと良いでしょう。そうでなければ、少しアブない人に思われてしまうかもしれません)。

面白いのは、この「アイデア発想の状況をいろいろ口に出してみる」ことによって、まず脳の働きが活性化され、同時に「情報の整理」がしやすくなることです。これまでのアイデア発想に関するプロセスを声に出して振り返ることによって、把握済みの情報の内容や考案済みのキーポイントの整理が可能となり、さらに「今何に困っているのか」=「足りないポイント」の洗い出しが出来ます。発想に行き詰まった際は、もう一度「問題の根本」に立ち帰ることで、何が不足しているのかを把握することが大切ですが、口に出して「出来たこと」「出来ていないこと」を整理すると、現段階での問題点も含め、これまで気づかなかったポイントが見えてくることが多いのですね。この際、必要に応じて「紙などに書き出しながら」整理を進めると、より状況の把握を行いやすくなります。このような際には「紙とペン」を使用しても良いですが、現在であればEvernote等の整理ツールをうまく活用すると、後から「アイデア発想のプロセス」を思い出しやすくなりますので、よりお薦めです。

「口に出して」情報の整理を行うと、「足りないポイント」や「考えをより深化させるべきポイント」がピックアップできます。そして、この際に「声に出して」いることによって脳の働きが活性化されていると、一緒に「こうしたらどうだろう?」「これなら行けるかな?」「これはダメかも」というように、様々な「追加の発想」が浮かんできます。この「浮かんできた新たな発想」を頭の中で思い浮かべるのではなく、声に出しておくことで「発想自体の明確化」が可能となり、同時に「発想の連鎖反応」が期待できるのですね。もちろんですが、この段階で発想したものは玉石混淆であり、最終的には「捨てる情報」となるものも多いです。ですが、この段階で必要なことは「とにかく多くの発想を行い、良いものを見つけ出す」ことですので、口に出して発想自体を活性化させることが有効なのですね。

さらに、口に出すという行動自体が、前回のコラムで採り上げた「誰かの助けを借りる」という点に繋がることも重要なポイントです。口に出して今悩んでいることを周囲にも共有できると、例えば「それはどういうことなの?」「なぜそう思うの?」というように、色々と「疑問」を提示されることがあります。ここでのポイントは、自分の中では「当たり前」と思っていることも、他人からすれば疑問に思うことも多いということです。言い換えれば、他人からの疑問に一つずつ答えていくことが情報の整理に繋がり、ひいては「見えなかったポイントが見えてくる」ことにも繋がるわけです。悩みをまずは「口に出す」ことで、周囲にアピールすることが可能となります。この場合はメール等の非リアルタイムなコミュニケーションではなく、口頭で「リアルタイムに」やりとりをした方が、次々と発想が出ますので効果的です。

まとめますと、アイデアに行き詰まった場合には「口に出してみる」ことで、

・脳の働きが活性化され、「出来たこと」「出来ていないこと」の整理がしやすくなる
・状況の整理を行うと同時に、発想自体が効率化され、追加のキーポイントを見いだしやすくなる
・口に出して状況を明確化することが周囲へのアピールにも繋がり、新たな情報の取得だけでなく、情報自体の整理もしやすくなる

以上の効果を期待できます。

「困ったときは声に出す」こと。私はこれを日頃から習慣づけています。達成したい目標を声に出して周囲にアピールすると、それ自体の達成を行いやすくなりますが、同様に「困っていることを声に出す」ことも、問題解決の上では有効です。「言霊」というように、声に出して読み上げる言葉には、まだ解明されていない様々な効果があるのではないかと私は思っています。「困ったら、まずは声に出す」。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓