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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第五回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の上での最重要作業である「情報収集」に関する基本的なアプローチについての説明をしました。アイデア発想に役立つ情報の収集方法については、

・フォアグラウンド収集
・バックグラウンド収集

の2通りがあり、基本的な情報収集はそれ自体を目的とするフォアグラウンド作業で行う必要がありますが、実際にアイデアに繋がるキーポイントとなる情報は、バックグラウンドで意図せずに集めた大量の情報の中に埋もれている可能性が高いということがポイントでした。アイデアの発想にはある種の「偶然性」が絡むことが多いですが、偶然を必然に変えるためには日常から問題や原因を考え続ける必要がありますので、いかに諦めずに粘り強く意識し続けることが出来るかどうかもアイデア発想においては大切なポイントとなることを押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、前回ご紹介した2つの情報収集アプローチについて、アイデア発想においてより大切な役割を果たす「バックグラウンド収集」についてのお話をしたいと思います。

前回のコラムの復習となりますが、バックグラウンド収集=ながら収集とは、アイデア発想のキーポイントである「まだ見えていない情報」を「見える化」する作業であり、その「見える化」作業については、

・情報のシャワー=様々なジャンルかつ大量の情報に「意図せずに」触れること
・情報の咀嚼=シャワーで浴びた情報を自らの言葉で「解釈」すること
・情報の記録=解釈したキーポイントも含め、情報を「漏らさず」記録すること

この3つの手順を踏むことが基本となります。

「情報のシャワー」は、「問題・原因に関係するかどうかはいったん置いておいて、とにかく様々な情報に触れる」ことを指します。良いアイデアや斬新なアイデアは、本来の問題や原因とは離れた、まったく畑違いの分野の情報からヒントを得て発想されるケースも多いのです。例えば、新幹線の屋根の上にあるパンタグラフ(集電装置)は、高速で走行中の風切り音を低減するために、フクロウの羽根の構造にヒントを得て改良を行ったそうです。フクロウは獲物に近づく際に、殆ど音を出さずに滑空できるそうですが、その情報をたまたま目にしたことが改良のヒントになったとのことで、これは「机の上だけで考えていたら、まず間違いなく思いつかない」事例だと思います。このように、「役に立つ・立たない」という視点は一度忘れて、あらゆる情報に貪欲に触れること。これを私は「情報のシャワー」と呼んでいます。多くの情報のを浴びるように取得することで、先程のフクロウの羽根のような「アイデアのヒント」が得られることが多いのですね。

「情報の咀嚼」は、シャワーで浴びた情報を「浴びっぱなし」にするのではなく、その情報の「意味」を簡単で良いので「自分の頭の中で整理すること」を指します。例えば、先程のフクロウの例であれば、記事や文献等に記載されているフクロウに関する情報全体を捉えるだけではなく、「フクロウは殆ど音を出さずに滑空できる」というように、情報の意味を分かりやすく整理しておくことが「咀嚼」のイメージとなります。ある情報が本来の問題・原因に関係するかどうかは、自分の中でその情報の「意味」を整理することによって初めて見えてくるものです。ですので、単に「情報に触れる」「情報を目にする」だけでなく、一つ一つの情報の意味を「これはこういうことかな?」というレベルで良いので、簡単に自分の「言葉」に置き換えるようにすることで、関連性を見いだしやすくしておくことが必要です。

そして「情報の記録」はそのままの意味で、咀嚼した情報は忘れないように記録しておくことを指します。この際のポイントは、頭の中には先程解釈した「意味」を簡単にだけ残しておき、情報の詳細についてはメモ書き等で別に記録しておくことにあります。シャワーで浴びた多くの情報を漏らさず覚えておくことは通常は難しいですから、要点や「気づき」だけを簡単に覚えるようにし、細かい点はメモを取っておけば良いです。この点では現在は、Evernoteのような便利なツールも多いですから、面白そうな情報は全て一元管理で記憶しておくということを心がければ良いと思います。

まとめますと、アイデア発想の上でのキーポイントとなるバックグラウンド収集=ながら収集については、

・特定の意図を思い浮かべずに様々な情報に触れ(情報のシャワー)
・その情報を解釈し(情報の咀嚼)
・要点や「気づき」のみを記憶した上で、情報の詳細は別途記録する(情報の記録)

これらの作業を日頃から継続的、かつ地道に行うことが基本となります。

そして、前回のコラムでお話ししたフォアグラウンド収集によって取得された基本情報と、これらのバックグラウンド情報、さらにはアイデアを発想する前提となる「問題や原因」が潜在意識下で融合するときに、「ひらめいた!」という瞬間が訪れるわけですね。

アイデアの前提となる情報が潜在意識下で融合するタイミングについては、何かしらのルールがあるわけでは残念ながらありません。ただ、私自身の経験から言えば「何かあるはず」という意識を常に持つことが重要かと思います。この際「何かあるかな?」では、「ありません」という意識が働いてしまうことが多いので、「必ず何かあるはずだ」という潜在意識を常に持たせておくことが重要なポイントとなります。前回のコラムでも書きましたが、このことは「あきらめない」ということにも繋がるポイントで、アイデア発想の上では常に意識することをお薦めします。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓