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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十五回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の際に生じうる「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法に関し、「発想の環境を変える」ことの重要性をお話ししました。

発想の環境を変えることに関してのポイントは、

・発想の環境を変えることで、「刺激」と「リラックス」双方の効果を期待できる
・環境が変わることで刺激が増えると、脳が活性化し、アイデアが浮かびやすくなる
・環境が変わることでリラックス出来ると、脳が緊張状態から解放され、自由な発想をしやすくなる

以上の3点でした。行き過ぎた気分転換は問題ですが、適度な気分転換はアイデア発想の上で役に立ちますので、業務等とのバランスを取りながら、うまく採り入れることが重要でした。

さて、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」というお話から始まったアイデア発想法編コラムも、今回で最終回となります。最終回のテーマは

まずは「やってみる」

です。

皆さんの中で、あるアイデアが思い浮かんだとします。そのアイデアが「良いアイデア」、すなわち「目的達成や課題解決のキーポイントとなる発想」かどうかは、どのように判断しますでしょうか? おそらく多くの方は「実際に目的達成や課題解決に繋がったら」と答えると思います。言い換えれば「本当に良いアイデアかどうかは、そのアイデアを実際に実行してみて、初めて分かる」ということです。だからこそ、世の中では様々な研究や実験が行われている訳ですね。研究や実験というと、大学や研究機関をすぐに思い浮かべるかもしれませんが、「トライアル&エラー」と言い換えれば、それ以外の日常的な業務や生活の中でも、誰もがいろいろな「アイデアの試行」を行っていることはイメージ出来ると思います。

ここでのポイントは「アイデアには失敗はつきもの」ということです。考えたアイデアが全て、目的達成や課題解決に繋がるのであれば素晴らしいですが、そのようなことは実際には起こりえないことも、また事実です。ですが、特にビジネス上のアイデアの発想に関して言えば「失敗は許されない」という傾向も多く見受けられるのではないかと私は思っています。仕事柄、色々な会社の方とお話をすることがありますが、いわゆる「PDCAサイクル」すなわち「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(結果確認)」「Action(改善)」のプロセスの中で、失敗を恐れる余り、「P」ばかりをしっかり頑張って、「D」以降に進まない、いわゆる「PPPPサイクル」になっているのではないか、と思える内容もよく耳にします。

実にもったいない話だと、私は思います。未来を確実に予想できる手段がない以上、「完璧な計画」はあり得ません。そして、もっと大切なことは

世の中に「失敗」はない。失敗を定義しているのは、あくまでもその「本人」である。
本人がその失敗から何かを学んだのであれば、それは「失敗」ではなく「学習」となる

ということです。これを言い換えたものが、まさに先程の「PDCA」であるとも言えるわけです。計画を作って実行したけれど、当初期待していた結果は得られなかった、だから改善して次に繋げよう、という話ですね。これが本来のPDCAであり、そこには「失敗を学習して、改善する」プロセスを必ず経ることが織り込み済みなのです。アイデアの発想もまさに同じ話であり、実行する前に「良いアイデア」であることが分かることなど、あり得ません。もちろん、実行する前から明らかにクオリティの低いアイデアだと分かるものもあると思います。しかし、大抵の「良さそうなアイデア」は、実際に実行してみて初めて、その効果が明らかになるものばかりです。

このような話をすると、よく耳にするのは「でも、それで会社が傾いたり、最悪潰れたりしたら、元も子もないのでは?」という話です。多少語弊があるかもしれませんが、私がこのような話を聞いて思うのは「So What(だから何?)」ということです。会社や組織を潰すということは、確かに恐ろしく感じるかもしれません。でも、そこから何かを学び取り、次に繋げることが出来るのであれば、それ自体は「有用なプロセス」と考えることも出来ます。第一、本気で「会社が傾いたり、潰れたりしたら困る」と思っていたら、「火事場の馬鹿力」ではないですが、いろいろとアイデアは出るものです。今流行の「半沢直樹」ほどのドラマチックなストーリーではないかもしれませんが、何かは必ず出ます。これは私自身の過去の経験からも、そう思います。

逆に言えば、一概には言えないかもしれませんが、会社が傾いたり潰れたりするような状況にまで行ってしまうケースというのは、「このままでも今は何とかなっているから大丈夫」という現状維持や「誰かが何とかしてくれる」という他人任せの意識が蔓延している場合に起こる話であり、アイデアの一つや二つをトライしたところで、それ自体が会社や組織の業績自体に影響を与えることはまずありません。もし、アイデアをトライしたことで影響が出るとすれば、「現状維持」を良しとする「空気」自体への影響であり、その「空気」の変化を好まない層が、アイデアの実現に関して様々な抵抗を行うことは考えられます。ですが、「ピンチはチャンス」とある通り、そのような抵抗を押し切る「新たなアイデア」を諦めずに考え続けることで、道は開けます。

私がフロンティアリンクを立ち上げてから、間もなく丸7年になります。今思い返せば「よくここまで続けられたなぁ」と思うことも多いですし、事実「崖っぷち」を突き進んだ時期もあります(今も私の中の気分は「常に崖っぷち」です)。ですが、そのようなタイミングで常に思うのは、

「生きていれば」何とかなる

言い換えれば「どんな失敗も、命を取られるわけじゃない」ということです。相手の命も取らず、自分の命を取られることもない。最終的な「落としどころ」をここに置いておけば、どのような「失敗」も「学習」と捉えることが出来ます。上杉鷹山の「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」、あるいは武田信玄の「為せば成る、為さねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人の儚さ」にもある通り、「まずは諦めずにやってみる」こと。良いアイデア実現の要諦は、まさに

まずは「やってみる」

ことにあります。

これまでのコラムでお話をした「問題を定義すること」「情報を集めること」「情報の組み合わせを考えること」「行き詰まりを打破すること」に加えて、「まずはやってみること」。良いアイデアを発想する際には、これらがキーポイントとなります。中でも「やってみる」ことが実際には最も重要ですので、何か良い発想が浮かんだら「まずは試してみること」、そしてもし、期待した成果が出なかったら「そこから学習し、改善すること」を常に意識していただければと思います。実行する前に悩むくらいなら、実行してから悩んだ方がよほど効果的です。皆さんの業務や生活の中で、本コラムで採り上げた「発想法」が、少しでもお役に立てば幸いです。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十四回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の際に生じうる「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法に関し、「口に出してみる」ことの有効性についてのお話をしました。

口に出してみることの効用は、大きく分けて

・情報整理の円滑化
・発想自体の活性化
・周囲へのアピール

以上の3点であり、アイデアに行き詰まった場合には「口に出してみる」ことで、

・脳の働きが活性化され、「出来たこと」「出来ていないこと」の整理がしやすくなる
・状況の整理を行うと同時に、発想自体が効率化され、追加のキーポイントを見いだしやすくなる
・口に出して状況を明確化することが周囲へのアピールにも繋がり、新たな情報の取得だけでなく、情報自体の整理もしやすくなる

これらの効果を期待できることがポイントでした。

今回のコラムでは、アイデアに行き詰まってしまった場合の3番目の対応方法として、「発想の環境を変える」ことの重要性についてお話ししたいと思います。

皆さんは、お風呂やトイレなどにいるときに、ふと「あっ、そうだ!」とアイデアが浮かんだ経験はありませんか? あるいは、眠りについて、少し落ち着いた頃に「あ、なるほど!」「そういうことか!」と思った経験はありませんか? 私自身はどちらも良くあるのですが、面白いもので、アイデアに煮詰まったときほど、検討作業を行っていた場所からいったん離れ、環境を変えることで新たな発想が浮かんで来やすくなります。

環境を変えることが発想に与える影響は大きく2つあります。一つは「刺激」であり、もう一つは「リラックス」です。一見するとこれらは相反する要素に思えるかもしれませんが、実は「刺激」と「リラックス」は、発想の上ではどちらも大切な要素となります。

まず「刺激」についてですが、様々な情報に触れることで「刺激」が発生すると、脳が活性化されることは多くの研究から立証されています。例えば、アメリカの生物学者フレッド・ゲイジ博士がネズミの発育に関して行った研究によると、二つの飼育箱を用意し、一つは何も物が置かれていない環境、もう一つは回転車やハシゴなどの様々な遊び道具を入れた環境として、その中でネズミを育てた場合、遊び道具がある環境で育ったネズミの方が、脳の海馬(記憶を司る領域)のニューロン(神経細胞)の数が平均で15%多く、ニューロン自体の増殖能力も2倍以上になったとのことです。実際に旅行先等で、日頃は目にしないようなものに触れて「へぇ!」と思ったときに、色々とアイデアが浮かんで来やすくなることは、皆さんも想像できるのではないでしょうか。

逆に、様々な検討を行っているときに、ずっと同じ場所で考え続けていると、このような「刺激」がどんどん失われていきます。脳はもともと変化を嫌う性質がありますので、刺激の少ない環境は脳にとっては「心地よい」環境ともいえます。そして、脳が心地よいと感じているときは、脳の活動レベルも低い状態にありますから、発想がどんどん浮かばなくなるというわけですね。この点からも、発想を行う際には、脳には常に「適度な刺激」を与える必要があり、そのためには「散歩をする」「片付けなどの作業を行う」「目や頭を動かして、視点を変える」など、適度な刺激を与える環境や変化する状況を意図的に作り出すことが大切なポイントとなります。

一方で「リラックス」も、発想の上では大切なポイントです。延々とアイデアを考えている状態の脳は「緊張している」とも言えます。刺激はアイデア発想の上では重要ですが、脳が緊張している状態とは言い換えれば「発想がある領域に限定されている状態」であり、それ以外の領域からの自由なアイデアが浮かびにくくなります。宋の欧陽脩の故事に「作文三上(さくぶんさんじょう)」という言葉がありますが、これは「よい文章を作るのに適した3つの場所」を意味し、それは具体的には「馬上」「枕上」「厠上」を指します。言い換えれば「移動中」「寝床」「トイレ」この3つの場所ではリラックス出来ることが多いので、自由な発想が浮かびやすいということなのですね。

これ以外にも、例えば私の場合は「ソファ」「キッチン」あるいは「海辺」などはリラックスできる場所になります。どうにも煮詰まってしまったときには、このような場所に移動することで、新たな発想を期待できます。人によってリラックスできる場所は色々と違いますので、皆さんもぜひこのような視点で「自分がリラックスできる場所」を一度思い浮かべてみると良いと思います。

まとめますと、

・発想の環境を変えることで、「刺激」と「リラックス」双方の効果を期待できる
・環境が変わることで刺激が増えると、脳が活性化し、アイデアが浮かびやすくなる
・環境が変わることでリラックス出来ると、脳が緊張状態から解放され、自由な発想をしやすくなる

環境がアイデア発想に与える影響について、押さえておきたいポイントは以上となります。

発想が出ないからといって、いつも環境を変えてばかりいるのは考え物ですが、現実逃避になりすぎないようにしつつ、「これ以上はダメだ!」と思ったらパッと環境を切り替えることもアイデア発想の上では大切です。その点では、旅行や外食などの非日常から、散歩、あるいは掃除洗濯といった家事まで、仕事「以外」の環境は、全てがアイデア発想に繋げることが可能ともいえます。「煮詰まったら、席を立とう」。まずはこのようなところからスタートすると良いのではないかと思います。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十三回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の際に生じうる「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法についてのお話をしました。

アイデア発想の上で、行き詰まりを感じた際には

・誰かの助けを借りる
・口に出してみる
・発想の環境を変える

この3点が有効であり、中でも「誰かの助けを借りる」ことは、アイデアに繋がる情報や結合のヒントを得られる可能性が高まるだけでなく、アイデアそのものを考え出すための「モチベーション」を高めることも可能となるので、意識したいポイントでした。そして、誰かの助けを借りることについては、

・自分自身でアイデアの基となる情報や結合が思い浮かばなければ、人脈を活用する
・単なる「知り合い」ではなく「スキルセット」に紐づられけた人脈を育てる
・日頃からのコミュニケーションにおいては、自ら「多くの情報を与える」ことを意識する

以上の点を押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、アイデアに行き詰まってしまった場合の2番目の対応方法として、「口に出してみる」ことの有効性についてお話ししたいと思います。

口に出してみることの効用は、大きく分けて

・情報整理の円滑化
・発想自体の活性化
・周囲へのアピール

以上の3点となります。

まず、口に出してみること=「発声」について、それ自体が脳の働きを活性化させることは「脳トレ」で有名な東北大学の川島教授も始め、様々なところで研究・発表されています。私自身もアイデアに行き詰まったときはよく、ソファーに寝転んでリラックスしながら「ああでもないこうでもない」とぶつぶつ「独り言」を言っています(このとき、周りに誰かいる場合は「これから独り言をぶつぶつ言うから、気にしないで」と一言伝えておくと良いでしょう。そうでなければ、少しアブない人に思われてしまうかもしれません)。

面白いのは、この「アイデア発想の状況をいろいろ口に出してみる」ことによって、まず脳の働きが活性化され、同時に「情報の整理」がしやすくなることです。これまでのアイデア発想に関するプロセスを声に出して振り返ることによって、把握済みの情報の内容や考案済みのキーポイントの整理が可能となり、さらに「今何に困っているのか」=「足りないポイント」の洗い出しが出来ます。発想に行き詰まった際は、もう一度「問題の根本」に立ち帰ることで、何が不足しているのかを把握することが大切ですが、口に出して「出来たこと」「出来ていないこと」を整理すると、現段階での問題点も含め、これまで気づかなかったポイントが見えてくることが多いのですね。この際、必要に応じて「紙などに書き出しながら」整理を進めると、より状況の把握を行いやすくなります。このような際には「紙とペン」を使用しても良いですが、現在であればEvernote等の整理ツールをうまく活用すると、後から「アイデア発想のプロセス」を思い出しやすくなりますので、よりお薦めです。

「口に出して」情報の整理を行うと、「足りないポイント」や「考えをより深化させるべきポイント」がピックアップできます。そして、この際に「声に出して」いることによって脳の働きが活性化されていると、一緒に「こうしたらどうだろう?」「これなら行けるかな?」「これはダメかも」というように、様々な「追加の発想」が浮かんできます。この「浮かんできた新たな発想」を頭の中で思い浮かべるのではなく、声に出しておくことで「発想自体の明確化」が可能となり、同時に「発想の連鎖反応」が期待できるのですね。もちろんですが、この段階で発想したものは玉石混淆であり、最終的には「捨てる情報」となるものも多いです。ですが、この段階で必要なことは「とにかく多くの発想を行い、良いものを見つけ出す」ことですので、口に出して発想自体を活性化させることが有効なのですね。

さらに、口に出すという行動自体が、前回のコラムで採り上げた「誰かの助けを借りる」という点に繋がることも重要なポイントです。口に出して今悩んでいることを周囲にも共有できると、例えば「それはどういうことなの?」「なぜそう思うの?」というように、色々と「疑問」を提示されることがあります。ここでのポイントは、自分の中では「当たり前」と思っていることも、他人からすれば疑問に思うことも多いということです。言い換えれば、他人からの疑問に一つずつ答えていくことが情報の整理に繋がり、ひいては「見えなかったポイントが見えてくる」ことにも繋がるわけです。悩みをまずは「口に出す」ことで、周囲にアピールすることが可能となります。この場合はメール等の非リアルタイムなコミュニケーションではなく、口頭で「リアルタイムに」やりとりをした方が、次々と発想が出ますので効果的です。

まとめますと、アイデアに行き詰まった場合には「口に出してみる」ことで、

・脳の働きが活性化され、「出来たこと」「出来ていないこと」の整理がしやすくなる
・状況の整理を行うと同時に、発想自体が効率化され、追加のキーポイントを見いだしやすくなる
・口に出して状況を明確化することが周囲へのアピールにも繋がり、新たな情報の取得だけでなく、情報自体の整理もしやすくなる

以上の効果を期待できます。

「困ったときは声に出す」こと。私はこれを日頃から習慣づけています。達成したい目標を声に出して周囲にアピールすると、それ自体の達成を行いやすくなりますが、同様に「困っていることを声に出す」ことも、問題解決の上では有効です。「言霊」というように、声に出して読み上げる言葉には、まだ解明されていない様々な効果があるのではないかと私は思っています。「困ったら、まずは声に出す」。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十二回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の上で意識すべき「連続性」に関し、「現実」から物事を考えることの重要性についての話をしました。現在の状況とそこから想定される長期的な傾向=「世の中のトレンド」を考えると、ビジネスに限らず様々な場面でアイデアの発想に役立ちますので、常に

「現状を冷静に見つめ、そこから何が起きるかを想像してみる」

ことを心がける点が重要なポイントでした。

これまでのアイデア発想法編コラムでは主に「アイデアを発想する上でのツールや考え方」を述べてきましたが、今回からは「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法をお話ししていきたいと思います。

一人でアイデアを色々考えていると、どこかで「これ以上考えても何も浮かばない」という状況に陥ってしまう経験は皆さんもお持ちなのではないかと思います。このような場合、私自身がよく使う解決方法は、

・誰かの助けを借りる
・口に出してみる
・発想の環境を変える

この3点になります。今回はこの3点のうち、「誰かの助けを借りる」ことについての説明をしたいと思います。

そもそも、アイデアの定義とは、

「既存の要素の新しい組み合わせ」=「情報の新たな結合」

でした。従って、アイデアに煮詰まってしまう状況というのは、簡単に言えば「情報が不足しているか」「結合が見つからないか」のどちらか(あるいはその両方)が原因ということになります。

ここでのポイントは、アイデアに煮詰まる状況というのは、

「自分自身の中では」情報が不足していたり、結合が見つからない状態である

という点です。言い換えれば「誰か他の人であれば、自分自身が気づかなかった情報や、結合のヒントを持っているかもしれない」ということなのですね。もちろんですが、誰かに話をしたからといって、確実に情報や結合のヒントが得られる保証はありません。ただし、「人を選べば」何かしらのヒントを得られる可能性は高くなります。

ビジネスの現場では「人脈=ネットワーク」の大切さを感じる場面も多いのではないかと思います。この点について私は

「単なる『知り合い』ではなく、スキルセットに紐づけられた人脈」

の重要性をいつも感じています。言い換えれば「このテーマなら、この人に聞けば何かあるだろう」と想像できることが重要である、ということですね。データベースならこの人、ネットワークならこの人、Webならこの人というような技術面のスキルセットを想像できる人脈はもちろん、人事組織やファイナンス、あるいはマネジメント全般やマーケティング等のスキルセットを持つ人脈、さらには、純粋にアイデアを発想している分野、例えば私の場合は教育全般ですが、このような「特定分野」のスキルや経験を多く有する人脈をどれだけ多く持てるかが、良いアイデア発想の際には極めて重要であると考えています。

このような人脈を育てるためには、日頃からのコミュニケーションが重要です。そして、より大切なポイントは「相手にとって役立つ知識や情報を、自分自身も日頃から得られるようにしておく」ということになります。ビジネスにおいては「ギブ&テイク」が大切ですが、私自身の感覚では「ギブ:テイク=1:1」の関係よりも、「ギブ:テイク=3~10:1」くらいの方が、困った際に相手も気持ちよく助けてくれる可能性が高いと思っています。これは決して「これだけ自分も助けたのだから、相手も助けてくれるだろう」という打算的な話ではなく、相手が喜ぶ姿を想像して、情報や考え方を伝え続けていくと、相手も気づいたことを教えたくなる可能性が高くなるということになります。このような観点に基づいて日頃からコミュニケーションを図っていると、アイデアに行き詰まった状況自体はもちろんのこと、日頃のちょっとした気づき等も気軽に共有しやすくなりますので、様々な情報や結合のヒントを得られやすくなります。結果として、アイデアを深化させられる確率が高まるということですね。

まとめますと、

・自分自身でアイデアの基となる情報や結合が思い浮かばなければ、人脈を活用する
・単なる「知り合い」ではなく「スキルセット」に紐づられけた人脈を育てる
・日頃からのコミュニケーションにおいては、自ら「多くの情報を与える」ことを意識する

以上が、アイデア発想の上で「誰かの助けを借りる」際に押さえておきたいポイントとなります。

一人でアイデアを悶々と考える作業は、時として辛いものでもあります。このような場合に、困ったときに気軽に相談出来る「誰か」がいると、アイデアに繋がる情報や結合のヒントを得られる可能性が高まるだけでなく、アイデアそのものを考え出すための「モチベーション」を高めることも可能となります。「一人ではなく、みんなで考える」こと。これもよいアイデアを発想する上では大切です。最初から誰かのアイデアを拝借することを期待してはいけませんし、アイデアの骨子は自ら考えるべきですが、他人の視点も組み合わせることで、アイデアはより深化させることが可能となります。参考にしていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十一回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想までの情報整理プロセスで意識すべき「連続性」についてのお話をしました。連続性とは簡単にいえば

「理想」と「現実」それぞれへの軸足の置き方

であり、言い換えれば

・理想=非連続=「出来たらいいな」を考えること
・現実=連続=「世の中のトレンド」を考えること

ということでした。アイデアを発想する上で、「行き詰まり」を感じてしまうことはよくありますが、その際にこの「連続性」に手がかりを求めることで新たな発想が浮かぶことが多くあり、従って

「連続性」とは、アイデア発想の上で常に立ち帰るべき「もう一つの原点」

とも考えることが出来る点を押さえておく必要がありました。

前回のコラムでは、「理想」についてのお話をしましたので、今回は「現実」についてのお話をしたいと思います。

皆さんは、2012年の1年間に日本の人口がどの程度減ったか、すぐにイメージできますでしょうか。2012年の1年間で、人口は約21万人減りました。日本全体の人口は約1億2,700万人程度ですので、21万人はもしかするとさほど大きな数字と思えないかもしれません。ですが、人口21万人の都市を想像すると、調布、つくば、松江くらいの規模となります。要は、1年間でこの程度の大きさの都市が丸ごと一つ消滅し、それが今後しばらくは続く、ということが、日本の人口動態の「現実」となります。

人口については、「減っている」という事実が分かったとしても、すぐに増やせるというものではありません。従って、人口動態及び予測については、現実からの「トレンド」=「傾向」を考える上で最も確実性の高い情報と考えることが出来ます。例えば、日本の人口の減少トレンド、並びにそれに伴う「少子高齢化」の進展というトレンドから考えると、労働人口の長期的な減少というトレンドもすぐに予測できます。そうなると、現在のGDPを今後も維持していくとするならば、「ITを活用した労働生産性の向上」や、「ロボットの導入による自動化」「海外からの労働力の輸入」などを検討しなければならないことも分かります。言い換えれば、これらの分野について新しいビジネスを立ち上げることが出来れば、将来的に発展する可能性が高いということになります。

一方で、日本だけでなく、世界の人口動態に目を転じてみましょう。国連のデータによれば、2011年に70億人を突破した世界人口は、2050年までに90億人を突破、21世紀末には100億人を超えるとされています。直近の2012年、2013年については、各1億人程度の伸びが見込まれるとのことで、日本国内では長期的な人口減少トレンドである一方、世界全体を考えると、毎年「日本が丸ごと一つ増えている」イメージであることが分かります。そうなると、「食料や水の不足」「エネルギーの不足」や、これらの資源不足に起因する「紛争の増加」が予見されます。このことから「食料や水をどのように確保するか」「エネルギー問題をどのように解決するか」といったテーマでビジネスや研究を行うことが今後ますます求められていくことが想像できると思います。

ちなみに、このようなトレンドを念頭に置いた研究で私自身が直近で面白いと思ったのは「3Dプリンタでピザを作る」という話でした。ピザと言っても、ショーケースに並んでいる見本のたぐいではなく、本当に「食べられる」ピザを3Dプリンタで作るという話なのですが、具体的には「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」といった原材料を粉状にして、それらを3Dプリンタの技術で積み重ねていくことでピザを作り上げることにチャレンジしているとのことです。もしこのような話が実現すれば、原材料の確保や保管の選択肢が大幅に広がりますので、食糧問題の解決に一役買うことは間違いないでしょう。結果が非常に楽しみです。

このように、現在の状況とそこから想定される長期的な傾向=「世の中のトレンド」を考えると、ビジネスに限らず様々な場面でアイデアの発想に役立つことが分かると思います。言い換えれば、

「現状を冷静に見つめ、そこから何が起きるかを想像してみる」

ことが、現実からのトレンドを考える場合には必要であり、前回の「理想」と同様、現実を冷静に捉えることもアイデア発想においては重要な役割を果たすことがイメージできると思います。

理想は大切ですが、理想だけでは物事が進みにくいこともまた事実です。その際には是非「現実」を客観的に把握し、そこから「このまま進んだらどうなるか」を考えてみると、新たな視点が広がると思います。アイデア発想に行き詰まった際には、是非「今、何が起きているか」「そこから、この先に何が起きるのか」を冷静に考えてみることもお薦めしたいと思います。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓