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ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第十四回

前回のプレゼン編コラムでは、「パワーポイントに頼りすぎない」と題して、効果的なプレゼン資料を作成する上でのパワーポイントの使用に関する注意点をお話しました。今回はプレゼンを作成する上で、シナリオと並んで大切なポイントである「デザイン」に関するお話をしたいと思います。

効果的なプレゼンにおいてデザインが重要である理由は、聴衆及びプレゼンターそれぞれの立場に対して存在します。優れたデザインは聴衆側の「理解」や「記憶」のしやすさをサポートします。一方でプレゼンター側にとっては、優れたデザインを実現する際には様々な「制約」が課されることになりますので、その制約が「創造性」を生み出し、よいプレゼン内容に繋がるというメリットがあります。

では、「優れたデザイン」とは、どのようにすれば考え出すことが出来るのでしょうか。私は以下の3原則を、デザイン検討時の基本方針として、お薦めしたいと思います。

・「引き算」で考える
・余白を活用する
・均一性と対称性を活用する

「引き算」については「シンプルプレゼン」の考え方にも通じるのですが、「相手の理解にどうしても必要なもの」以外の要素は出来るだけ「差し引く」というイメージです。例えば、スライドの番号や会社のロゴ、グラフや表の背景、ワンポイントイラスト等ですね。プレゼンの構成を最初に考える際はどうしても「足し算」で考えざるを得ないのですが、ある程度「足し算」が終わった段階で、今度は「引く」作業を改めて行うことで、「本当に必要な要素」を見極めることが出来るようになります。相手の理解や記憶に対して不要なものを極力そぎ落とすこと、これが「引き算」の意味であり、理解しやすいデザインの第一歩となります。

余白の活用も大切なポイントです。適切な余白は「上質感」「安心感」「自然さ」を演出し、結果的に聴衆の関心を惹きつけ、理解や記憶をサポートすることに繋がります。逆に、余白が多すぎたり少なすぎたりすると、緊張感や間延びした不自然な印象等が生じ、聴衆の関心を惹きつけることが難しくなります。余白を考える上では、人間が最も美しく、また心地よく感じやすいと言われている「黄金比(縦:横=1:1.618)」をベースとし、スライドを縦・横共に三等分した「三分割法」を活用し、そのグリッドの交点に要素を配置することから始めてみると良いと思います。

三分割法の例

均一性と対称性については、複数の要素同士の関係や、余白等を考える上で大切なポイントです。例えば、文字の大きさや書体・位置はスライドを通して統一されているか、上下あるいは左右の余白は同じ大きさになっているか、斜め矢印の角度は線対称になっているか、等ですね。均一性と対称性にあまり配慮されていないスライドは、雑多な印象を与え、結果的には聴衆がプレゼンに魅力を感じない要因となることがあります。私自身は日頃のスライド等の作成でもこの「均一性と対称性」には非常に注意を払っています。

実のところ、私自身は小・中・高と「美術」が非常に苦手でしたので、今でもデザインには苦労しているところがあります。ですが、プレゼンに関していえば、デザイナーの方のような「専門的な能力」に不安があったとしても、これらの基本的なポイントを押さえておくだけで、「伝わりやすい」スライドを作成することは可能であると、私自身の経験からも思います。「デザインは苦手」という方がもしいらっしゃいましたら、まずは今回のコラムに記したような「デザインの基本」から少しずつ意識してみると良いのではないかと思います。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓