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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第四回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、人間の思考回路の基本的な構造についてのお話をしました。人間の思考回路はピラミッド構造であり、また「自身の考えを深めるプロセスと、それを分かりやすく伝えるプロセスは全くの別物である」点を認識することの重要性について述べました。

今回のコラムでは少し話の視点を変えて、「相手の疑問はそもそも予測できるのか?」という、論理思考を考える上での根本的な課題の一つについて触れてみたいと思います。

私の過去のコラムをお読みいただいている方は、私がことある毎に「相手の疑問」に対して的確な答えを示すことの重要性を述べていることにお気づきかと思います。相手の疑問に対して的確な答えを示すことで、論理的な「話の繋がり」をきちんと設定することが出来ますし、プレゼンであれば「相手の同意を得ること」に繋がるのですから、「相手の疑問」を予測することは物事を考える際の入口として、非常に大切なポイントであることが分かります。

一方で、「相手」の疑問を「予測」するわけですから、正確に予測できない場合ももちろんありますし、そもそも「相手」のことをきちんと知らなければ、予測を立てることすら難しいのでは、と思ってしまうこともあるかもしれません。「本当に相手の疑問は予測できるのだろうか?」と考え込んでしまう状況になったとしても、決して不思議ではありません。

そこで、今回は相手の疑問を予測する際の「基本技術」をご紹介したいと思います。それは「疑問のパターン分類」です。

実は、ビジネスの現場であれば、相手が持つ疑問は以下の「4パターン」しかありません。

1. 何をすべきか?(What)
2. どうすればよいか?(How)
3. それは正しいか?(Right)
4. なぜか?(Why)

「何をすべきか?」は、何かを行う必要性があることは理解しているのですが、実際に行うべきことがまだはっきりしておらず、その「行うべきこと」について相手は疑問を持っている状態です。

「どうすればよいか?」は、実際に行うべきことがはっきりしている状態で、その「行うべきこと」を具体的に実現するための「プロセス」や「ステップ」について相手は疑問を持っている状態です。

「それは正しいか?」は、こちらの話の内容自体の「真偽」について相手は疑問を持っている状態です。

「なぜか?」は、こちらが話をしている「理由」や、自分自身との「話題の関係性」について相手は疑問を持っている状態です。

言い換えれば、「何をすべきか?」と「どうすればよいか?」は、こちらと相手との間に「基本的な合意」は得られている状態、「それは正しいか?」「なぜか?」は、こちらと相手との間に「基本的な合意」が得られていない状態での相手方の疑問のパターンとなります。社内での指示命令系統が存在する状況で、指示を行う場合は「何をすべきか?」「どうすればよいか?」という疑問が多くなりますし、社内外を問わず、企画・提案等の「新しいこと」や「改善」を行う場合の最初のステップでは「それは正しいか?」「なぜか?」という疑問が多くなります。

いかがでしょうか。一口に「相手の疑問を予測せよ」と言われても、具体的にどうすれば良いか悩んでしまうかもしれませんが、「相手の疑問が上記4パターンのどれに該当しそうか」を考えるのであれば、ハードルは一気に下がるのではないかと私は思います。自分自身が相手の立場に立って、自分がこれから相手に話そうとする内容と同じ話を聞くと仮定した状況で「何をすべきか?」「どうすればよいか?」「それは正しいか?」「なぜか?」の4パターンについて、何をどう感じるかを考えてみると、そこから先の具体的な疑問を想定しやすくなります。

相手の疑問を想定することは、決して容易なことではありませんし、常に正解を得られるわけでもありません。ただし、相手もあくまでも「人間」ですし、ビジネスの現場であれば「立場は違えども、相手の状況を推察できる」ための経験を自分自身が有していることも多いと思います。「もし自分が相手の立場だったら」と仮定した上で、先の4パターンの疑問を入口として、相手の思考回路を想像してみると、自分自身の話の流れや展開について、修正が必要な箇所が見えやすくなると思います。相手の立場に立って論理的に話を展開する際のヒントとしていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓