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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第七回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の上で必要となる様々な情報の収集源について、私が日常的に利用しているものをいくつかご紹介しました。ニュース・雑誌・書籍等のいろいろな情報がある中で、アイデアの基となるヒントは「ゴミ箱」=通常ならば見落としてしまうような、メルマガやDM等の中にも入っている可能性があるので、時々見てみると何か良い発想がひらめくかもしれない、という点がポイントでした。

第四回のコラムから前回のコラムまでは、いわゆるアイデアの基となる情報の収集に関するポイントをテーマにお話をしてきましたが、今回のアイデア発想法コラムからは、具体的にアイデアを構築していく段階での具体的な考え方についてのお話をしていきたいと思います。

問題を発見し、その問題の原因を考察した上で、必要と思われる情報の収集を幅広く行った後で必要となるアイデア構築作業は、一言で言えば「統合」になります。アイデアに繋がる様々な情報をどのように「統合」して、アイデアの原型を形作るか。この統合方法の基本的なポイントを押さえておくことで、発想を効率的に広げることが可能となります。

アイデア発想に繋げるための情報の統合方法は大きく、

・足し算
・引き算
・かけ算

この3つの手法があります。今回のコラムではその中で最も基本である「足し算」についてお話しします。

アイデアの元々の定義が「情報の新しい組み合わせ」であることからも分かる通り、まずは様々な情報を「足し合わせて」新しい価値を考え出すことがアイデア発想の基本となります。例えば「自転車」であれば、古くはホンダのスーパーカブ、近年では電動アシスト付き自転車のように、「自転車」と「動力機関」の組み合わせで新しい乗り物の価値を創造したり、「ウォシュレット」であれば、「便座」と「洗浄機能」の組み合わせで新しいトイレ用の機器を生み出したりなど、「足し算」によって新しい価値が構築されている事例は数多くあります。

足し算でアイデアを発想する際のキーワードは

あったらいいのに

です。

例えば、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン等のモバイル機器を持ち運ぶ方の中では、バッテリーで使用できる時間を気にされる方も多いと思います。私自身もその一人なのですが、一日外出をしている間、AC電源に一度も接続できなくてもモバイル機器を安心して使えるようにするための「モバイルバッテリー」が最近では人気を集めています。ただ、このモバイルバッテリーですが、USB経由での給電を行うものが現在では主流で、家庭用のコンセントと同じACプラグを備えているものは殆どありません。充電器の中には、ACプラグのみに対応しているものもまだ多いですので、「あったらいいのに」を考えると、

「モバイルバッテリー」に「ACプラグ」があったらいいのに

と、なるわけですね。

実際いろいろ検索してみると、カメラマン向けの機材で、ストロボを電源のないところでも使用できるように、バッテリーとDC/ACインバータを内蔵した機材は市販されていましたが、重量が約1.6kgと、携帯できる大きさとしてはやや大きい印象がありました。これ以外にもノートパソコンに給電可能なモバイルバッテリーもありますが、私の使っているノートパソコンは電源コネクタの形状が特殊で使用できないため、テストとして自動車用のDC/ACインバータとモバイルバッテリーを繋げて、モバイルバッテリーから100V電源を取れないかなと思っています(すみません、ちょっとマニアックな話で)。

もちろんですが、ニーズ云々の問題がありますので、上記のような製品が市販化されるかどうかは別問題です。ですが、アイデア発想の上ではこのような「あったらいいのに」を考えることが近道であることはイメージしていただけるのではないかと思います。

もう一点、足し算で考える際の重要ポイントは、

2つだけではなく、3つ以上の組み合わせを考えられないか

という点になります。

2つの情報の組み合わせだけでは、他の人も容易に発想できる可能性が高いですので「オリジナリティ」や「競争有意性」が働きにくくなってしまいます。これが、3つや4つ以上の情報の組み合わせとなると、同じ発想が別の場所で発生する確率は低くなります。例えば、私自身が常々思っているのは「クレジットカードやポイントカードの束を、なんとかできないか?」ということです。クレジットカードだけでなく、ポイントカードや会員証等々まで入れると、私自身が日頃持ち運ぶカードの束は、厚さでいえば2cm近くになります。これを1枚のカードに情報を全て集約することが出来れば、どれほど楽になることでしょう。

この「複数のカード情報を1枚に集約する」という基本機能に加えて、例えば「表面をディスプレイにして、カードの画像を都度切り替えて表示できるようにする」「通信機能を付けて、お店に入ったら自動的にそのお店のポイントカードが表示される」等の機能を「足し算」していくと、オリジナリティが高くなっていきます。個人的には、ソニーがFelica技術と有機EL(あるいは電子ペーパー)の「足し算」で、このような「スマートカード」を作ってくれないかな・・・と思ったりしています(どうでしょう、ソニーさん?)。ちなみに、スマホのアプリではこれに近いものは存在しますが、「ATM」や「自動券売機」等での利用を考えると、カードサイズのモバイルデバイスのニーズは間違いなく今後も存在するのではないかと私自身は思っています。

まとめますと、

・アイデア発想の基本は「足し算」である
・足し算の基本は「あったらいいのに」を考えることから始まる
・2つだけではなく、3つ以上の組み合わせを考えてみる

ことが、今回のお話のポイントとなります。まずは、皆さんがお使いの身近なアイテムに関して「あったらいいのに」を考えてみることから始めますと、アイデア発想の訓練を楽しく行うことが出来るかと思います。是非、参考にしていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓