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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第三回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデアを新たに生み出す際の最初の入り口である「問題」の発見方法についてのお話をしました。問題を発見する際には、

・「理想」と「現実」のギャップが問題の根本であること
・「理想」を高く掲げることで、発想可能なアイデアも広がること
・問題の「種」は、日々の生活のあらゆるシーンに存在すること

これらのポイントを押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、アイデアの発想を実際に始める前に必要なもう一つの準備作業である、問題の「掘り下げ」についてのお話をしたいと思います。

「問題」自体の根本は「理想」と「現実」とのギャップであることは前回のコラムで説明をした通りですが、アイデアを発想する上では、この「根本的な問題」の状態のままでは、その問題が網羅している範囲が広すぎて、具体的なアイデアをイメージしにくくなることが多いです。例えば、私自身は最近スマートフォンを買い換えたのですが、スマートフォンを使用する際の大きな問題として「バッテリーの持ち」があります。以前使用していたスマートフォンは、使い方によってはバッテリーが半日で切れてしまうような状況でしたので、この問題は私にとっては非常に切実な問題でした。

この場合、「理想」と「現実」のギャップを「問題」と考えると、例えば、

理想:ヘビーユースの状況でも、3日間充電しなくて大丈夫
現実:半日間しか持たない

という状況のギャップ、すなわち「電池の持ちをあと2日半延ばすには、どうすれば良いか」という点が「根本的な問題」となります。

そこで、この「電池の持ちを2日半延ばす」という点だけから、この目標を達成するためのアイデアの発想を始めたとしましょう。この段階で発想を始めてもいろいろと思い浮かぶことはあると思いますが、制約がなさ過ぎて、思い浮かぶアイデアが発散しすぎてしまうか、玉石混交となってしまう可能性が生じます。あるいは逆に、制約のなさの故にかえって思い浮かばないというケースもあり得ます。

このような場合においては、問題が生じる原因を「掘り下げる」ことによって、アイデアを発想する領域を始めに絞っておくことが有効です。この掘り下げに関しては、ロジカルシンキング編コラムの第8回で採り上げた「縦方向思考の原則」に従い、「なぜ?」または「どのように?」と考えることが基本的なアプローチとなります。今回のスマートフォンのケースであれば、「『なぜ』ヘビーユースの状況で、バッテリーが3日間持たないのか」と考えると、例えば

・バッテリー自体の容量が少ないから
・ハードウェアの中で、バッテリーを多く消費するものがあるから
・ソフトウェアの中で、バッテリーを多く消費するものがあるから

このような「掘り下げ」が可能となります。従って、まずは「バッテリー自体の改善」「ハードウェアの改善」「ソフトウェアの改善」という3つの領域から、アイデアの発想を始めると良いことになります。ちなみに、私自身が最近買い換えたシャープ製のスマートフォンでは「IGZO」という液晶の新技術によって、ハードウェアの中でもバッテリー消費の大きかった液晶の消費電力改善に成功しています。私自身の通常の使い方ですと、一日半程度は充電なしでも大丈夫ですが、使用するソフトウェアによっては通信を頻繁に行うものもあり、そのような場合ですと1日持つか持たないかということもありました。従って、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの改善、あるいはソフトウェアを使用するユーザー側の使い方の改善等も、今回の場合はアイデアを発想する領域としては有効かと思います。

まとめますと、アイデア発想のスタートとなる問題を考える際には、

・理想と現実のギャップに基づいて、根本的な問題を定義する
・根本的な問題が生じる原因を「掘り下げる」ことで、アイデアを発想する領域を最初に絞り込む

以上2つの作業を行うことが必要となります。

もちろんですが、掘り下げによってアイデアを発想する領域を始めに絞り込んでしまうと、絞り込んだ領域以外のところに存在する可能性のある「よいアイデア」を見落としてしまう可能性も生じます。ですが、多くの場合では、アイデア発想を始める段階で何らかの制約を設けなければ、かえってアイデアが発散してしまうか、あるいは思いつきにくい状況となってしまいます。アイデアの発想においては、制約を生かす必要がある場面と制約を外す必要がある場面の双方がありますが、制約を外す必要のあるケースについてはまた追って説明しますので、今回については「制約を生かす」ことがアイデア発想においては重要だと考えていただければと思います。

(担当:佐藤 啓