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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第一回

「ロジカルシンキング」あるいは「論理思考」という言葉は、よく耳にすると思います。自分が考えていることを相手に伝えたり、考える作業自体を進めたりする上で、「論理的に考える」ことの必要性を皆さんも感じたことはあるのではないかと思います。

「論理的」という言葉自体も耳にすることが非常に多いのではないかと思いますが、この言葉自体の「そもそもの意味」=「本質」については、普段はあまり思い至らないのではないか、言い換えれば「考えるまでもなく、当たり前のように使っている」のではないか、とも私は思います。私自身も、過去はそうでしたので。

今回からスタートする「ロジカルシンキング編」のビジネスパワーアップコラムでは、このような私自身の経験も踏まえ、ロジカルシンキングを「実務において役立てる」ための考え方について、できるだけ分かりやすく触れていきたいと思います。第一回は「そもそも」ロジカルシンキングとは何か=ロジカルシンキングの「本質」について、話をしたいと思います。

そもそも「ロジカル」=「論理」とは、どのような意味なのでしょうか? 広辞苑によると、

【論理】思考の法則的つながり

とあります。すなわち、複数の思考や論証があり、それらを筋道立てて「法則的に繋げること」が論理であり、論理思考とはこのような複数の思考や論証を法則的に繋げ、「自らの考えをまとめ上げること」と考えることが出来ます。

ここでのポイントは「法則」という部分です。この「法則」及び「論理学」自体の詳細についてはここでは触れませんが、何らかの「法則」が「前提条件」として存在し、その前提に従って思考や論証を繋げていくことが論理思考であるならば、この「法則=前提条件」のイメージをきちんと考えておく必要があります。

ここで、少し話の角度を変えて「論理的に正しくない」と思われる状況を想像してみたいと思います。例えば、皆さんがプレゼンで「この話は論理=筋道が通っていない」と思うときは、具体的にはどのような状況でしょうか? 例えば、話の流れの中で、それぞれのポイントの間に「矛盾」や「飛躍」や「疑念」が見受けられると「論理的ではない」と感じることが多いのではないでしょうか。

このときの大切なポイントは「矛盾」や「飛躍」や「疑念」を感じているのは、紛れもなく皆さん自身であり、一方でプレゼンターは「自分の話の流れは論理的に正しい」と思って話をしている、ということです。「正しい」という言葉は非常に難しい言葉で、絶対的な正しさというものは世の中には存在せず、あくまでも状況、あるいは道徳や社会通念といった「常識」の上で、相対的に「正しい」か「正しくないか」ということを論じているだけに過ぎません。そして、論理思考において大切なポイントは、その論理を正しいと判断するのは、最終的には自分ではなく「相手」であるということなのですね。この話は「論理の押しつけ」という言葉からもイメージが湧きやすいと思います。自分にとって正しいと思われる論理で話を展開しても、相手がその論理を理解し、共感を示さなければ、論理的に話が通じることには繋がりにくいわけです。

話を戻しましょう。論理とは「思考の法則的つながり」であり、この「法則」=「前提条件」が鍵になる、ということでした。そして、ここまでの話から、その前提条件を決めるのは実は自分自身ではなく、相手なのだということも、イメージを掴んでいただけたのではないかと思います。

これらの点から、私自身は論理思考を

相手の「疑問」に的確な「答え」を示すための思考方法

と「定義」しています。この結果、自らが伝えたいことを「矛盾・飛躍・疑念」なく伝えられることになります。

これは、自分自身の中で論理的に考える場合も同じことです。その場合の「相手」とは「もう一人の自分」=「客観的な自分」ということになります。相手、または客観的な自分が「疑問」を持たないような話の組み立てが出来た時、初めて「矛盾・飛躍・疑念」なく「論理的に」考えをまとめ上げることが出来ることになります。

言い換えれば、

論理思考とは「Q&A」である

とも考えられます。この方がイメージとしては、理解しやすいと思います。

自分の思考や論証・論点が複数ある場合、それらを「論理的に」つなぎ合わせる際のキーポイントは「相手の疑問が何か」ということになります。相手の疑問に対しての答えになっていない、あるいは相手の疑問が想定できない場合、その考えは論理的ではなく「独りよがり」という話になってしまいます。

相手の疑問が何かを考えることは非常に難しい話ですが、これを避けては「論理的な思考力」を身に付けることは難しいと、私自身はこれまでの経験から強く感じています。まずは「論理思考」とは「自分だけで完結する話ではない」ということ、言い換えれば「相手の立場に立って『疑問』を想定すること」こそが、論理思考の入口であるということを、イメージしていただければと思います。

(担当:佐藤 啓