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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第二回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、ロジカルシンキングの「本質」というテーマでお話をしました。「ロジカルシンキング」=「論理思考」を私自身は、

相手の「疑問」に的確な「答え」を示すための思考方法

言い換えれば

論理思考とは「Q&A」である

であると「定義」しました。今回のコラムでは、ロジカルシンキングを行う上で非常に大切なポイントである「言葉」の「定義」について、お話をしたいと思います。

まず、言葉の「定義」のイメージについて少し考えてみましょう。例えば、皆さんが上司の方から「昨日の売上一覧」を作成して下さい、という指示を初めて受けたとします。「売上一覧」という言葉自体は非常にありふれたものだと思いますが、例えばその「売上一覧」という言葉だけで、詳細な指示がなかったとすると、その一覧は「消費税は込みなのか、抜きなのか、両方ともなのか」あるいは「売れた商品の分だけなのか、売れていない商品も含め、全商品リスト分なのか」といった「微妙なニュアンスの違い」が皆さんと上司の間に生じる可能性があります。そして、皆さんが考えた「売上一覧」と、上司の方が想定していた「売上一覧」のイメージが異なっており、そのまま仕事を続けてしまった場合、その仕事は残念ながら「やり直し」となってしまいます。

このように、言葉の定義が明確ではない状況の下では、その言葉の定義、言い換えれば「お互いが考えていること」を予め明確化し、摺り合わせを行っておくことで、業務をより効率的に進めることが出来ます。「言葉の定義」を明確にしておくことで、質問や確認の回数を減らすことが出来、結果としてより正確に業務を推進することが可能となるのですね。

言葉というのは難しいもので、自分が当たり前のように使っている言葉であっても、人が違えば解釈が異なる可能性は常に存在します。専門的な用語はもちろんのこと、何気なく普通に使っている先程の「売上一覧」のような言葉であっても、お互いに異なった解釈をしている可能性を考慮する必要があるわけです。

そして「言葉の解釈の違い」=「定義が明確化されていない状態」が実際に生じている場合、その状況は「疑問」に繋がります。ロジカルシンキング=論理思考を考える上で、「言葉」とは相手と自分との共通の土台であり、この土台自体の意味がもしも双方で異なっているならば、そこには必ず「意味の共通化」を行うためのステップが必要となります。それは実際には「疑問」という形で発生します。言葉の意味に不明確なところがあり、それを確認するために「疑問」が生じるのですね。

私がこれまで述べた通り、論理思考の定義を「相手の『疑問』に的確な『答え』を示すための思考方法」とするならば、自らの考えを表現する「言葉」自体に相手が疑問を持つような状況はできる限り避けなければなりません。そのためには「言葉の定義」を常に考え、論証の上で大切な言葉であればあるほど、相手がその言葉を「理解してくれている」ことを期待するのではなく、きちんと「定義」を明確に述べ、相手の疑問を「事前に解消する」ような筋道を立てることが重要になります。論理を示す上での「言葉」自体に疑問が生じるような状況とは、論理的に話を進める「前段階」ですでに躓いているという意味ですから、まずはそこからきちんと対応をしなければならない、ということです。

ロジカルシンキング=論理思考の具体的な進め方については次回以降のコラムで順に説明をしたいと思いますが、今回は論理思考を考える上での「前段階」の必要事項として、「言葉の定義」を明確化することの重要性を是非意識していただければと思います。論理思考を行う上で、相手と自分の共通のツールである「言葉」自体の定義を明確化し、共有することで、初めて「論理」=「法則的な繋がり」の段階を考えることが可能となります。

「この言葉は、本当に相手も意味をきちんと理解しているだろうか」「この説明で、本当に言葉は足りているだろうか」このように考えることが、論理思考の上では非常に大切です。是非「言葉の定義」を日頃から意識することをお薦めしたいと思います。

(担当:佐藤 啓