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ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第十三回

前回のプレゼン編コラムでは、「シンプル・イズ・ベスト」と題して、シンプルかつ効果的なプレゼン資料の作成に関するお話をしました。今回はシンプルなプレゼンの作成方法に関連し、「パワーポイントに頼りすぎない」と題して、効果的なプレゼン資料を作成する上でのパワーポイントの使用に関する注意点をお話したいと思います。

パワーポイントは、プレゼンの在り方を変えたツールとしては最も貢献度の高いものの一つだと思います。PCとパワーポイント以前のプレゼンは「OHPシート」を用いて資料を作成することが多く、効率面でも効果の上でも、決して満足できるものではなかったと思います。一方で、パワーポイントの登場以降は、PC上で資料を簡単に作成し、プロジェクター等と組み合わせることで、誰でもグラフィカルでインパクトのあるプレゼンを手軽に行うことが出来るようになりました。この点について言えば、パワーポイントがプレゼンに与えた影響は私自身は素晴らしいと思っています。

一方で、パワーポイントを「そのまま」使用することによる「弊害」も考えられるのではないか、と私自身は思っています。私自身の愛読書の一つである「プレゼンテーションzen」(ガー・レイノルズ 著)にも書かれている「パワーポイントによる死」という表現がまさに適切だと思うのですが、パワーポイントの標準機能に従ってプレゼン資料を作成していく場合、どうしても「箇条書き」を多用してしまう「読ませるプレゼン」になってしまうことが多くなるのではないかと私は考えています。

プレゼンとは「読ませるもの」ではなく「見てパッと分かるもの」を目指すべきであるということは、私がセミナー等を通じて常々話していることなのですが、パワーポイントの標準スライドのレイアウトは、「タイトルと箇条書き」すなわち「テキストベースで説明する」ことを基本としています。しかも、標準フォントでは箇条書きは「7行」まで入力することが出来、もし8行以上の入力時には親切にも「自動調整」(=フォントサイズや行間を自動調整し、プレースホルダ=枠内にテキストを強制的に収める機能)が働いて、長い「文章」でもスライド内に入力することが可能になっています。

このようなプレゼンは「読ませるプレゼン」であり、聞き手が理解しにくく、また退屈に感じてしまう可能性が高くなります。「読ませるプレゼン」を作りたくなってしまう理由はいくつかあると思いますが、よくある理由としては「資料だけが一人歩きした場合にもきちんと理解できるように」言葉等の補足をスライドに入れたくなるということがあります。それであればワードで補足資料を作れば良いのであって、「見てパッと分かる」プレゼンを目指すのであれば、スライドと補足資料の内容は適宜異なるようにすることも考慮すべきと私は考えます。

この他にも、パワーポイントの機能が便利であるが故に

・複数の表やグラフを一つのスライドに挿入する
・効果的ではないアニメーションを設定する
(アニメーションの是非には賛否両論あると思いますが、私はアニメーションは原則「使用しない」方針です)
・ワンポイントのイラストやワードアート等の「装飾」を多用する

等は、一般的には行われる頻度も高いのではないかと思います。
それらが対象者の理解度を高め、ひいてはプレゼンの目的である「相手の同意を得ること」の助けとなるのであれば良いのですが、一般的に言えば、このようなプレゼンは残念ながら「逆の効果」を持ってしまうことが多いのではないかと私は思います。

いかがでしょうか。普段何気なく使用しているパワーポイントですが、今一度「この方法は、本当に聞き手の理解度を高め、自らの話への同意を得るために役に立っているのだろうか」と考えてみることをお薦めしたいと思います。相手の立場に立って考えてみることことで、見えてくることは多く存在します。パワーポイントに頼りすぎないように工夫することは、プレゼンにおいてはそのための一つの方法であると私は思います。是非ご参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓