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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十六回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、順序の原則を構成する3つのルールのうち、「構造順」についての説明をしました。構造順とは簡単に言えば「エクセルの並べ替え」と同じようなイメージの順序指定であり、その際のキーポイントは、

・構成する各要素がMECEであること
・事象が現れる順序、もしくは数値化できる場合は昇順もしくは降順で並べること
・プロセス(=フローチャート)が存在する場合は、その順序を適用すること

ということでした。「北→南」「左→右」「大→小」「高い→安い」「重い→軽い」等については、場合によっては「思い浮かんだ順に」表記してしまう可能性もありますので、「比較可能な場合」や「プロセスが明確に存在する場合」の順序については、「構造順」を改めて意識することが重要でした。

今回のコラムでは、順序の原則を構成する最後のルールである「重要度順」についての説明をしたいと思います。

重要度順の基本的な考え方はその言葉通りで「重要なものから順番に並べる」こととなります。すなわち、

・構成する各要素がMECEであること
・要素間には意味合い上の類似性もしくは関連性が存在すること
・上記2点が成立する際に、重要度の高い順から並べること

これらの点が重要度順を考える際の基本的なポイントとなります。

ただし、重要度順を考える際には、「誰にとって」重要なものであるかを考えること、言い換えれば

重要度を判断する基準

を常に意識する必要があります。

例えば、プレゼンにおいてある提案を行うとしましょう。自分自身は「品質」「コスト」「納期」に関する説明を行う予定であり、その中でも「品質」に力点を置いて話をしたいとします。ところが、相手方の一番の関心事が「コスト」だったら、話がかみ合わなくなってしまう可能性がありますね。

この点から分かるように、重要度を判断する基準は「相手方にある」点を認識することが重要度順を考える際の一番のポイントとなります。
言われてみれば当たり前の話に感じるかもしれませんが、実際のケースでは「自分が最も関心のあること」や「自分が最も伝えたいこと」を「重要」と考えてしまうこともよくあります。

このような「行き違い」を防ぐための最も効果的な方法は「相手の疑問を予測する」ことです。重要度を判断する基準が相手方にあるのであれば、相手が最も疑問に思う内容こそが、裏返せば相手にとって最も重要なポイントとなります。相手の疑問の予測方法については、第四回のロジカルシンキング編コラムにて説明をした通りですが、「話の順番を決める」上でも相手の疑問を予測することが非常に重要な役割を果たすことを、改めて認識していただければと思います。

以上が重要度順を考える際のポイントとなります。重要度順も前回の構造順と同様、普段から意識せずに使用している順序思考ですが、大切なポイントは

重要度を判断する基準は「相手方にある」

ことになります。この点を是非意識して、重要度順を検討していただければと思います。

ここまでの3回のコラムで「時系列順」「構造順」「重要度順」の考え方を説明してきました。論理的な順序構成はこれら3つのルールの「いずれか」を適用することで可能となることは第十三回のロジカルシンキング編コラムで説明した通りですが、これらの順序のいずれかを「適用可能」であるためには、各構成要素が正しくグループ化されている必要があります。

言い換えれば、もし、ある論点グループの順序構成を検討した場合に、「時系列」「構造」「重要度」のいずれも適用できない、もしくはグループ内の一部にしか適用できないのであれば、その論点グループはそもそも「グループ化」が正しく行われていない可能性が高くなります。例えて言うならば、果物のグループを考える場合に、「りんご」「なし」「みかん」「くるま」をピックアップしている状態です。りんご・なし・みかんまでは順序を考えられると思いますが、ここに「くるま」が存在すると論点グループとしては成立しなくなってしまいます。このように、順序構成を考えることは「論点グループの妥当性確認」を兼ねていることも併せて押さえていただければと思います。

第十三回のコラムでも述べた通りですが、個別の論点に関する「掘り下げ」「広がり」「関連づけ」をきちんと行っていたとしても、「説明の順序」が適切でなければ、全体としての効果は大きく損なわれてしまいます。ですので、「論理的な話の構成を考える」上では、「順序」が非常に大切な役割を果たすことを改めて意識していただければと思います。

(担当:佐藤 啓