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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第四回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデアの基となる「問題」に関し、問題自体を「掘り下げる」ことでアイデアを発想する領域を絞り込むことの重要性についてのお話をしました。アイデア発想のスタートとなる問題を考える際には、

・理想と現実のギャップに基づいて、根本的な問題を定義する
・根本的な問題が生じる原因を「掘り下げる」ことで、アイデアを発想する領域を最初に絞り込む

ことが大切でした。この点は言い換えると、アイデアが「情報の新しい組み合わせ」である以上、発想する領域にある程度の制約を設けないと、取得すべき情報の範囲が広くなりすぎ、かえって発想しにくくなってしまう可能性があるということですので、発想を開始する時点で押さえておきたい重要なポイントとなります。

今回のコラムでは、アイデア発想の上での最重要作業である「情報収集」についてのお話をしたいと思います。

これまで述べてきた通り、アイデアが「情報の新しい組み合わせ」であるならば、その基となるのは「複数の情報」となります。しかもこれらは数個の異なる情報を組み合わせれば良いというものではなく、数百、数千、場合によっては数万以上の情報の中から「これだ!」という組み合わせを考えることになります。従って、これだけの情報量を収集するためには、その方法も工夫しなければなりません。

情報収集に関する基本的なアプローチは、以下の2つとなります。

・フォアグラウンド収集=情報を集めるためだけの作業を行う
・バックグラウンド収集=他の作業や生活等をしながら、その中で情報を集める

まず、定義した問題及びその原因の掘り下げによってある程度の情報収集エリアを限定した段階で最初に行うのは、フォアグラウンド収集となります。言い換えればこれは、その問題あるいは原因に関しての基本情報の収集となります。前回のスマートフォンのバッテリーの持続時間の例であれば、そもそもバッテリーの構造はどのようになっているのか、現在最も進んでいるバッテリーの技術は何か、バッテリーを消費する理由は何か、等ですね。これらの情報収集は文献や論文、あるいは場合によっては統計資料やWebサイト等を検索・確認・評価するといった「問題あるいは原因に関連する情報を集める」こと自体を目的とした作業として行われます。

ですが、アイデアを発想する上でより大切なのは「バックグラウンド収集」です。他の作業や生活等をし「ながら」、その中で問題・原因に関連しそうな情報を広く集めるのがバックグラウンド収集のイメージですので、私はこれを分かりやすく「ながら情報収集」と呼んでいます。

新企画の発想を具体的にイメージすると分かりやすいのですが、そもそも、机の上でいくら新企画のための情報収集=「フォアグラウンド収集」をしたところで、良いアイデアの発想は出来ません。これは断言しても良いです。なぜかというと理由は簡単で、フォアグラウンド収集で得られる、少し調べれば分かる程度の情報だけの組み合わせで良いアイデアが出るのであれば、それはすでに他の誰かが考えていて、実現している可能性が高いからです。

「自分が考えている『良いアイデア』は、世の中で少なくとも3人は既に考えている」とも言われますが、よいアイデアを発想するためには「他の人が考えていなさそうな情報と、既存情報の組み合わせ」を常に意識することが大切です。そして「他の人が考えていなさそうな情報」というものは、当たり前ですが自分自身も最初は見えていないものです。そのため、この「考えていなさそうな情報」=「見えていない情報」を取得するためには、フォアグラウンド収集=「見えている情報及びその関連情報を集めることを目的とした収集」では、無理なのです。

バックグラウンド収集=ながら収集とは、この「見えていない情報」を「見える化」する作業とも言い換えることが出来ます。では、どのように「見える化」するのか。これについては

・情報のシャワー=様々なジャンルかつ大量の情報に「意図せずに」触れること
・情報の咀嚼=シャワーで浴びた情報を自らの言葉で「解釈」すること
・情報の記録=解釈したキーポイントも含め、情報を「漏らさず」記録すること

この3つの手順を踏むことが基本となります。

それぞれの詳細については次回のコラムで改めてお話したいと思いますが、バックグラウンド収集=ながら収集は「意図的な情報収集」ではなく「偶然をチャンスに変える」=セレンディピティに近いイメージの作業となります。意図しないで行う作業のため、逆に言えば「潜在意識下」で問題や原因を思い浮かべ続けられるかどうかが作業を成功に導くためのキーポイントとなります。そのためには、問題や原因を整理しておくことはもちろん、関連する情報をフォアグラウンドで収集し、「偶然をキャッチするための受け皿」を増やしておくことも必要不可欠な作業となります。

まとめますと、アイデア発想の上では、アイデアの基となる情報収集が最重要作業となりますが、その作業には大きく

・フォアグラウンド収集
・バックグラウンド収集

の2通りがあり、基本的な情報収集はそれ自体を目的とするフォアグラウンド作業で行う必要がありますが、実際にアイデアに繋がるキーポイントとなる情報は、バックグラウンドで意図せずに集めた大量の情報の中に埋もれている可能性が高いということになります。

このように、アイデアの発想にはある種の「偶然性」がどうしても絡んできます。ただし、偶然を必然に変えるためには、日常から問題や原因を考え続ける必要があります。いかに諦めずに粘り強く意識し続けることが出来るかどうか。これがアイデアを生み出すための最大のキーポイントとも言えます。参考としていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓