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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第八回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想に繋げるための情報の統合方法の基本をお話ししました。情報の統合を考える際には、大きく、

・足し算
・引き算
・かけ算

の3つの考え方があり、中でも足し算が最も基本的なアプローチであることを説明しました。足し算による情報の統合については、

・アイデア発想の基本は「足し算」である
・足し算の基本は「あったらいいのに」を考えることから始まる
・2つだけではなく、3つ以上の組み合わせを考えてみる

以上のポイントを押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、情報の統合方法の2番目の方法である「引き算」について説明したいと思います。

アイデア発想の基本は「足し算」なのですが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということわざにもある通り、あまりにもいろいろな情報を足し合わせすぎると、かえってアイデアの本質がぼやけてしまうことが多くあります。

分かりやすい例が直近のスマートフォンの機能進化でしょう。従来のケータイからスマートフォンに市場が急速にシフトする中で、元々の携帯電話の機能であった「通話」や「メール」以外の様々な機能がスマートフォンに追加されています。これを便利と感じるユーザーがいる一方で、従来のケータイユーザーからは「こんなにたくさんの機能は使いこなせないだろう」「シンプルに、電話とメールだけが利用できれば良い」という声も多く聞かれているようです。

従来のケータイはOS(基本ソフト=スマートフォンであれば、AndroidやiOS)やアプリを全て独自に開発・チューニングする必要がある関係で、現状ではスマートフォンよりも開発コストが相当高くなってしまっています。そのため、この原稿を書いている2013年の夏モデルに関しては、主要3キャリアからはケータイの新機種は一つも発表されず、スマートフォンのみが市場に投入されています。一方で、例えばNTTドコモで近年最も売れた端末はパナソニックの「P-07B」という通常のケータイであるという話もあります。ソフトバンクでもiPhoneの次に売れているのは通常のケータイだそうです。

スマートフォンにはその特性上、色々な機能を簡単に追加できますが、今でも従来のケータイが売れ筋であるという事例からは、単に「足し算」で考えるだけでなく、逆に「携帯電話の本質=通話とメール」以外の機能は「引き算」で考えることで、よりシンプルに、市場が望むものを想像することが可能となることをイメージできるかと思います。実際にこの流れは、今年の春モデルくらいから徐々に見られる「シンプルスマホ」=機能や操作画面をシンプルにしたスマートフォンにて現れてきており、従来のケータイの開発が現状では難しい以上、このようなシンプルスマホの流れも今後は目立ってくるのではないかと私は考えています。

アイデア発想において「引き算」が有効となる最も分かりやすい場面は、「プレゼン」や「デザイン」です。一目で分かるプレゼンのスライドや、パッと見て印象に残るデザインを想像していただければ分かりやすいのですが、どちらもその構造が非常に「シンプル」であることが多いと思います。シンプルとは「わび・さび」にも繋がるポイントですが、言葉を換えれば「余計なものを極限までそぎ落とし」「伝えたいことの本質に迫る」作業と捉えることも出来ます。

このような作業を行う場合、最初から「引き算」が可能なわけではありません。あくまでも、最初のステップは「足し算」、すなわち必要な情報の「組み合わせ」をいくつか考えることからスタートします。ただし、大切なポイントは、単に「足し算」を行っただけで済ませるのではなく、ある程度の情報を足し合わせ、ここから先はもう追加する情報はないと判断した時点で、そこから一歩引いて客観的に「本質」を考え、本質に対して不要なものを見極めながら「引き算」をすることとなります。この「一歩引いて客観的に本質を考える」ステップを踏まずに、足し算だけでアイデアを考えてしまうと、「余計な機能がたくさん入った」=「市場を向いていない」製品が出来てしまったりする可能性が高くなるわけですね。

まとめますと、

・情報の統合においては、「引き算」も「足し算」と同様に重要である
・足し算での情報の組み合わせをある程度考えた上で、次に引き算を考えてみる
・引き算を行う際は常に「アイデアの本質」を客観的に見据えた上で、余計な情報のそぎ落としを意識する

以上が「引き算」に関しての重要なポイントとなります。

「押しでもダメなら引いてみる」ではないですが、アイデア発想の上では、足し算と引き算のバランスが非常に大切です。
何を足し、何を引くか。足し算と引き算の発想が自由に行えるようになると、アイデア構築の効率が一層高まります。是非参考にしていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓