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ビジネスパワーアップコラム<アイデア発想法編> 第十五回

前回のアイデア発想法編コラムでは、アイデア発想の際に生じうる「ツールや考え方を駆使しても、どうしてもアイデアが思い浮かばない」=「どうしようもない行き詰まり」の際の解決方法に関し、「発想の環境を変える」ことの重要性をお話ししました。

発想の環境を変えることに関してのポイントは、

・発想の環境を変えることで、「刺激」と「リラックス」双方の効果を期待できる
・環境が変わることで刺激が増えると、脳が活性化し、アイデアが浮かびやすくなる
・環境が変わることでリラックス出来ると、脳が緊張状態から解放され、自由な発想をしやすくなる

以上の3点でした。行き過ぎた気分転換は問題ですが、適度な気分転換はアイデア発想の上で役に立ちますので、業務等とのバランスを取りながら、うまく採り入れることが重要でした。

さて、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」というお話から始まったアイデア発想法編コラムも、今回で最終回となります。最終回のテーマは

まずは「やってみる」

です。

皆さんの中で、あるアイデアが思い浮かんだとします。そのアイデアが「良いアイデア」、すなわち「目的達成や課題解決のキーポイントとなる発想」かどうかは、どのように判断しますでしょうか? おそらく多くの方は「実際に目的達成や課題解決に繋がったら」と答えると思います。言い換えれば「本当に良いアイデアかどうかは、そのアイデアを実際に実行してみて、初めて分かる」ということです。だからこそ、世の中では様々な研究や実験が行われている訳ですね。研究や実験というと、大学や研究機関をすぐに思い浮かべるかもしれませんが、「トライアル&エラー」と言い換えれば、それ以外の日常的な業務や生活の中でも、誰もがいろいろな「アイデアの試行」を行っていることはイメージ出来ると思います。

ここでのポイントは「アイデアには失敗はつきもの」ということです。考えたアイデアが全て、目的達成や課題解決に繋がるのであれば素晴らしいですが、そのようなことは実際には起こりえないことも、また事実です。ですが、特にビジネス上のアイデアの発想に関して言えば「失敗は許されない」という傾向も多く見受けられるのではないかと私は思っています。仕事柄、色々な会社の方とお話をすることがありますが、いわゆる「PDCAサイクル」すなわち「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(結果確認)」「Action(改善)」のプロセスの中で、失敗を恐れる余り、「P」ばかりをしっかり頑張って、「D」以降に進まない、いわゆる「PPPPサイクル」になっているのではないか、と思える内容もよく耳にします。

実にもったいない話だと、私は思います。未来を確実に予想できる手段がない以上、「完璧な計画」はあり得ません。そして、もっと大切なことは

世の中に「失敗」はない。失敗を定義しているのは、あくまでもその「本人」である。
本人がその失敗から何かを学んだのであれば、それは「失敗」ではなく「学習」となる

ということです。これを言い換えたものが、まさに先程の「PDCA」であるとも言えるわけです。計画を作って実行したけれど、当初期待していた結果は得られなかった、だから改善して次に繋げよう、という話ですね。これが本来のPDCAであり、そこには「失敗を学習して、改善する」プロセスを必ず経ることが織り込み済みなのです。アイデアの発想もまさに同じ話であり、実行する前に「良いアイデア」であることが分かることなど、あり得ません。もちろん、実行する前から明らかにクオリティの低いアイデアだと分かるものもあると思います。しかし、大抵の「良さそうなアイデア」は、実際に実行してみて初めて、その効果が明らかになるものばかりです。

このような話をすると、よく耳にするのは「でも、それで会社が傾いたり、最悪潰れたりしたら、元も子もないのでは?」という話です。多少語弊があるかもしれませんが、私がこのような話を聞いて思うのは「So What(だから何?)」ということです。会社や組織を潰すということは、確かに恐ろしく感じるかもしれません。でも、そこから何かを学び取り、次に繋げることが出来るのであれば、それ自体は「有用なプロセス」と考えることも出来ます。第一、本気で「会社が傾いたり、潰れたりしたら困る」と思っていたら、「火事場の馬鹿力」ではないですが、いろいろとアイデアは出るものです。今流行の「半沢直樹」ほどのドラマチックなストーリーではないかもしれませんが、何かは必ず出ます。これは私自身の過去の経験からも、そう思います。

逆に言えば、一概には言えないかもしれませんが、会社が傾いたり潰れたりするような状況にまで行ってしまうケースというのは、「このままでも今は何とかなっているから大丈夫」という現状維持や「誰かが何とかしてくれる」という他人任せの意識が蔓延している場合に起こる話であり、アイデアの一つや二つをトライしたところで、それ自体が会社や組織の業績自体に影響を与えることはまずありません。もし、アイデアをトライしたことで影響が出るとすれば、「現状維持」を良しとする「空気」自体への影響であり、その「空気」の変化を好まない層が、アイデアの実現に関して様々な抵抗を行うことは考えられます。ですが、「ピンチはチャンス」とある通り、そのような抵抗を押し切る「新たなアイデア」を諦めずに考え続けることで、道は開けます。

私がフロンティアリンクを立ち上げてから、間もなく丸7年になります。今思い返せば「よくここまで続けられたなぁ」と思うことも多いですし、事実「崖っぷち」を突き進んだ時期もあります(今も私の中の気分は「常に崖っぷち」です)。ですが、そのようなタイミングで常に思うのは、

「生きていれば」何とかなる

言い換えれば「どんな失敗も、命を取られるわけじゃない」ということです。相手の命も取らず、自分の命を取られることもない。最終的な「落としどころ」をここに置いておけば、どのような「失敗」も「学習」と捉えることが出来ます。上杉鷹山の「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」、あるいは武田信玄の「為せば成る、為さねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人の儚さ」にもある通り、「まずは諦めずにやってみる」こと。良いアイデア実現の要諦は、まさに

まずは「やってみる」

ことにあります。

これまでのコラムでお話をした「問題を定義すること」「情報を集めること」「情報の組み合わせを考えること」「行き詰まりを打破すること」に加えて、「まずはやってみること」。良いアイデアを発想する際には、これらがキーポイントとなります。中でも「やってみる」ことが実際には最も重要ですので、何か良い発想が浮かんだら「まずは試してみること」、そしてもし、期待した成果が出なかったら「そこから学習し、改善すること」を常に意識していただければと思います。実行する前に悩むくらいなら、実行してから悩んだ方がよほど効果的です。皆さんの業務や生活の中で、本コラムで採り上げた「発想法」が、少しでもお役に立てば幸いです。

(担当:佐藤 啓