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【書籍名】花神(上)(中)(下)
【著者】司馬 遼太郎
【出版社】新潮文庫

今回は書評の題材となる書籍の選択に、とても迷いました。そこで、最近の本ではなく、昔の歴史小説をご紹介したいと思います。

この本は、叔父に進められて手に取った、私にとって初めての司馬遼太郎さんの本です。司馬遼太郎さんと言えば、数多くの本を残されており、中でも幕末を中心とする歴史小説を多く書かれています。数多くの有名な幕末の登場人物の中でも本書「花神」の主人公である「大村益次郎」はあまり有名な部類には入らないのではないでしょうか。
そう思って、何気なくインターネットで調べてみたら、本書が30年以上前に大河ドラマとなっていたのでびっくりしました。

本書は3巻構成となっていますが、最初は上巻を読むのがとても大変だった事を今でも覚えています。単調というか平凡な話で、淡々と物語が進んでいき、途中で読むことを止めようと思いました。ですが、中巻に入り読み進めていくと、いつの間にか引き込まれてしまい、そこからは一気に最後まで読んでしまいました。

「村田蔵六(大村益次郎)」は、長州の周防国(現在の山口県山口市)の百姓として生まれますが、学問によって、医者、翻訳家(技術者)、そして最後は官軍の軍部における最高の地位に就くという、とても不思議な人生を送った人です。農家の出でありながら、本で読んだ知識を元に軍を動かし勝利を勝ち取っていった歴史は、とても興味深く思いました。

そして、西洋の文字を読める村田蔵六が西洋の本を頼りに蒸気船を作っていくさまは、新しい技術にチャレンジする人々に通じるものがあると思います。コンピュータや携帯電話の普及により仕事の仕方が大きく変わり、スマートフォンやタブレットなどの普及により、さらに仕事の形態が大きく変わっていく現代において、この新しい事を取り入れる合理的な考え方は、通じるものがあると感じました。

本書の中で作者である司馬遼太郎さんは「大革命とは、思想家が精神的支柱を作り、策略家が押し進め、技術者が仕上げることである。」と書いています。とても合理的な考え方の持ち主である村田蔵六は、技術者として、実務家として、革命の最後を仕上げていきます。この3段階の流れは今のビジネスにも通用するのではないでしょうか。こういうサービスを提供したい、この様な商品が欲しいなどの、思いが最初は先行し、次に具体性を持ったサービスや商品を考え設計し、最後にこれらを実現する。

もちろん、どの段階に関わる人であっても、それぞれが重要な役割を担っています。しかし、しっかりと地に足を付けて実務をこなす実務者が居るからこそ、思いが達成されるのではないかと改めて実感しました。

幕末に興味がある方はもちろん、幕末の技術革新や、本を読むこと学ぶことの重要性を改めて感じてみたい方にお奨めの本です。

本コラムが、読者の皆さんの日々の業務に役立てば幸いです。

【ジャンル】歴史小説
【関連・お勧め書籍】竜馬がゆく、燃えよ剣

(担当:小口 真己