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ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第三回

前回のプレゼン編コラムでは「1枚1分」の原則に従うことでプレゼン資料の作成時間短縮を図ることが可能であることを書きましたが、今回はこの「1枚1分」と同様に、プレゼン作成時に覚えておきたい「数字キーワード」をいくつかご紹介したいと思います。これらの数字に気を配ることで、よりよいプレゼン資料を効率的に作成することが可能になります。

◆ 箇条書きは「最大13文字以内に収める」

皆さんはヤフーのサイトを見たことはありますでしょうか? おそらく多くの方が目にしているサイトだと思いますが、ヤフーのトップページには最新のニュース8本を掲載する「トピックス」という欄があります。実はこのトピックスの各記事タイトルの文字の長さは、ヤフーさんの内規で「最大13文字まで」と決められているそうです。

この13文字というのは「人間がパッと見た瞬間に内容を判断できる最大の文字の長さ」がどの程度かということを、様々な実験等の結果から導き出した結果得られた、ある種の経験則的なものという話なのですが、この「パッと見て内容を判断できる」という部分は、プレゼンにもそのまま応用することが出来ると思います。

ただし、実際に「13文字」にきっちり収めようとすると、文章の圧縮に相当苦労します。実際、ヤフーさんのニュース担当者の方も、この「13文字制限」にニュースタイトルを収めるために、どのように文字を削るか、非常に悩むそうです。ただ、この「悩み」が、良いプレゼン(あるいは良いニュースタイトル)の第一歩となることは間違いないと思います。文章の文字を削る訓練は、そのまま「内容の重要なポイントだけを抜き出す」訓練にもなります。是非、この「1行13文字以内」という決まりについては、覚えておくことをお薦めします。

◆ 箇条書きの本数は「最大3本」

一枚のスライドに使用する箇条書きの本数については、これも色々な考え方があると思います。私はこれについては「最大3本」という数字をお薦めしたいと思います。この理由には、人間の記憶力と密接な関係があります。

人間が同時に物事を記憶できるのは「5±2」と言われています。要は、平均では同時に5つ程度の物事までを覚えることが出来ますが、この数字には個人によるばらつきもありますので、おおよそ「3つから7つ」程度のものを一度に覚えられる、ということになります。

プレゼンでは自分が伝えたいことを、まずは相手に覚えてもらい、その上で相手に「判断」を行ってもらう必要が生じます。その上では、この「同時に記憶できる数」は相手の理解を効果的に進める上で非常に重要な要素となるわけですね。人によって同時に記憶できる数が異なる以上、最も少ない同時記憶数である「3つ」にポイントを絞り、話をすることが大切であると私は考えています。

言い換えれば「要点は3点以内にまとめよう」ということでもあります。これはプレゼンだけでなく、ビジネス全体にも応用することが可能な、重要な数字です。

◆ 1分間で話す文字数は「最大300文字」

前回のコラムでご紹介した「1枚1分」の原則ですが、これは実際に「話す文字数」でいうとどの程度の分量になるのかという疑問をお持ちかもしれませんね。その答えは「文字数にして、最大300文字」です。

この300文字という数字は、NHKのアナウンサーの方がニュース原稿を読む際の標準の速さから来ています。ただし、NHKニュースを実際に聞いてみると、1分間に300文字という速さは「思ったよりも速い」印象を受けると思います(私自身はそうでした)。ですので、この「300文字」という数字はあくまでも「上限」として考えた方が良いと私は考えています。

ちなみに、私自身が実際のプレゼンで1分間に話をする分量は、平均で250~260文字程度です。NHKニュースよりも15%ほどゆっくりしたスピードで話をしているイメージですね。従って、10分のプレゼンであれば、2,500文字程度の原稿を用意することになります。

この2,500文字という数字ですが、実際にこの文字数を書いてみると、「予想外の文字の少なさ」に驚くかもしれません。実際に、今回のこのコラムの「ここまでの」文字数は約1,700文字です(トータルでは約2,100文字です)。これは「一字一句話す内容」ベースでの文字数ですから、これ以上の内容を話すことは「出来ない」ということになります。このことからも、プレゼンで時間内にきちんと自分の伝えたいことを伝えきるためには「事前の入念な準備」が必要なことがよく分かると思います。

実際、私はプレゼンにおいては、スライド資料の作成よりもこの「原稿作成」の時間の方が作業負荷は大きいと考えています。スライドについては話をしたい内容の「大枠」を書くだけで済むので作業はそれほど大変ではないのですが、原稿の善し悪しは「プレゼンの理解度」及び「時間厳守」に直結するので、その分非常に気を遣うのですね。

まずはこの「1分で最大300文字」という長さを基準に、原稿作成を進めてみて下さい。内容をよりよいものにブラッシュアップする上でも、この数字キーワードは非常に役立つと思います。

(担当:佐藤 啓