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ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第六回

前回のプレゼン編コラムでは「リハーサルの重要性」について、特にリハーサルによる内容の妥当性確認方法の説明をしました。今回は少し話が前後しますが、「妥当な内容」を創り上げるための重要なポイントである、プレゼンのシナリオ(ストーリー)の作成に関するキーポイントをご紹介したいと思います。

まず、そもそも何を持って「妥当な内容」と考えられるのかという点ですが、初回のコラムでもお伝えした通り、プレゼンにおける最も重要なポイントは「自分が伝えたい、相手の同意を得たいと思うテーマに対し、相手の持つ疑問を予測し、それに対する答えを示していくこと」ということになります。従って、シナリオとは言い換えれば、この「相手の疑問を予測し、それに対して答えを示しながら、自分が伝えたい内容を話していく」というプロセスそのもの、となるわけです。

ここで重要なポイントは、「相手の持つ疑問に対して、自分が示そうとする答えは、本当に『答え』になっているだろうか」という点です。気をつけたいのは、自分がアピールしたいポイントが、必ずしも相手の疑問にヒットするとは限らない、ということです。

例えば、技術的に優れた、画期的な新製品を作ったとしましょう。技術者であれば、誰でもその「技術そのもの」をアピールしたいと思います(私も昔はそうでした)。ですが、お客様は本当にその技術「自体」が欲しいと思っているのでしょうか。おそらくたいていの場合は、お客様は「売上UP」「コスト削減」「満足度UP」等の「メリット」があることを望んでおり、技術はあくまでも「手段」であって、それ自体が「目的」とは思っていないはずです。従って「売上が上がるのですか?」「コストが下がるのですか?」という相手の質問に対し、「この新製品は画期的な新技術を採用しており・・・」という話を延々としたところで「だから?」という話になってしまうと思います。

一方で例えば「コストが下がるのかどうか」という疑問を相手が持っていると予測できたとしましょう。もちろんこの疑問を本当に相手が持っているかどうかが初めから分かっているケースもありますし、初回プレゼン等でまだ情報を把握していないケースも考えられますが、今回はこのような疑問を持っていると仮定します。そうすると、その疑問に対して先程の新製品では、「初期投資がこれまでよりも2割下がります」「ランニングコストも1割下がります」「製品の耐久性も上がり、耐用年数が1.5倍になりました」等、「具体的な」話を示すことが出来るようになります。

ここまで読み進めて、「何を当たり前な」ともし思われた方がいらっしゃいましたら、おそらくその方はプレゼンも得意、商談をまとめるのも上手、という感じかと思います。ですが、往々にして「コストの話を聞きたいのに、技術の話ばかりになっている」ようなプレゼンというのは、よく見かけるものなのです。客観的に言われれば当たり前の話なのに、いざ自分の想いが込められた製品・サービスを前にすると、どうしても「自分の想い」を伝えたくなってしまうのですね。

ですので、シナリオを作成する際のキーポイントは、「まずは客観的に相手の疑問を考える」こと、さらに、その疑問に対しての答えを「1つ」ではなく最低「3つ」は用意していること、答えの説明を通じ、自らが伝えたいことをきちんと伝えられること、になります。

このことが分かれば、後は疑問と答え、次の疑問と答え、のように、「Q&A」の形式を繰り返し、想定される相手の疑問に全て答えるように構成を作成していけば良い、ということになります。換言すれば「シナリオとは、Q&Aである」となります。実はこのことは、コミュニケーションの基礎でもあります。単に状況を説明するだけでも、活発なコミュニケーションの下では相手は何かしらの「疑問」を持ちます。それに対してまた「答え」を示しながら、会話が膨らむわけです。このポイントをうまく活かしているのが、例えば会議の際のファシリテーション(議論の促進)におけるQ&Aの活用だったりするわけですね。

「シナリオとはQ&Aである」この点を是非押さえていただき、よいシナリオ作成にお役立ていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓