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ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第十一回

前回のプレゼン編コラムでは、印象に残るプレゼンを実現するには「視覚情報を活用する」ことが重要であるというお話をしました。今回のコラムでは印象に残るプレゼンにおいてのもう一つの大切なポイントである「言葉」についてのお話をしたいと思います。

「言葉」。日本語であれば、皆さんも普段から「特に深く意識せず」使っていると思いますが、私自身は「言葉」ほど難しく、奥深く、それでいて「適切な活用」が出来た時のインパクトが大きなものはなかなか存在しないと思っています。英語も勉強した立場からすると、英語よりもむしろ日本語の方が難しいとさえ思ってしまいます。事実、日本語の持つ「微妙なニュアンス」や「言い回しの多さ」は、外国の方が日本語を習得するときの一番のハードルになると言われています。

「印象に残るプレゼン」において「言葉」が大切であると私が考える理由は、

・理解のしやすさ
・インパクトの大きさ
・プレゼン自体やプレゼンターの「品格」や「知性」の印象づけ

これらのポイントに「言葉」が重要な役割を果たすと考えているからです。

「言葉」がプレゼン内容の理解度に対して与える影響については、イメージが沸きやすいと思います。簡潔な言い回しや適切な言葉遣いは、より短時間での内容の理解を可能とします。また、難しい内容であればあるほど、平易な言葉に置き換えて説明することも重要です。難しいことを難しく、理解しにくい形で説明してしまうことが一般的には多いと思いますが、難しいことを簡単な言葉に置き換えて理解しやすいように説明出来るようになるためには、相応の訓練と習熟が必要です。この点について私が常々心がけていることは「同じ内容を説明するのであれば、一字一句でも少なく」ということです。実際、私の場合はプレゼンにおける「簡潔で平易な言い回し」や「適切な言葉遣い」を考えている時間が、資料作成の中では最も高い割合を占めています。簡潔・的確・平易な「言葉」をどの程度心がけられるかで、プレゼンの理解度が大きく変わってきますので、この点は是非意識されることをおすすめします。

「言葉」の持つインパクトの大きさも、プレゼンの印象を高めるためには考慮すべきポイントであると考えます。この点に関しても先程述べた「簡潔な言い回し」を心がけることが基本的な対応方法となりますが、インパクトを高める上では「体言止め(表現を名詞で終わらせる)」や「漢語」を活用することも効果的です。特に漢語については後述する「品格」「知性」にも関連するポイントですので、こちらも意識して活用されることをおすすめします。なお、漢語に関しての詳細は「和語を漢字熟語で表現する」(三省堂 Web Dictionary)も参照いただければ幸いです。

「言葉」と「品格」や「知性」との繋がりについては、私が「言葉」の難しさを感じるポイントでもあり、同時にその大切さを改めて考えるポイントでもあります。通常の会話の中でも「丁寧な言葉遣い」と「粗雑な言葉遣い」では、相手に与える印象が完全に異なることはイメージが沸きやすいと思います。さらに、「敬語を的確に使用できるか」「漢語での表現に違和感がないか」「ら抜き言葉等の『口語的表現』を使っていないか」等のポイントについては、プレゼン自体だけでなく、話者の品格や知性、さらにはそれらから類推される「信用度」さえも印象づけてしまう、極めて重要なポイントであると私は考えています。

私自身も「適切な言葉遣い」については今でも日々、頭を悩ませています。現にこのコラムの文章を書く際も、構成の検討時間よりも内容の推敲と言葉遣いの見直しに掛ける時間の方が大幅に長くなりました。しかし、「適切な言葉遣い」を行うことで得られる上記のメリット、そして逆にそれを「行わないこと」によるデメリットを考えると、言葉遣いについては「気を遣いすぎる」くらいの方がちょうど良いのではないかと思います。

言葉遣いの上達方法についての近道はなく、「日頃からの訓練」言い換えれば「上質な文章を数多く読み」「自ら考えて書き出す機会を設定する」=インプット・アウトプットを増やす以外に方法はないと私は考えます。例としては「新聞の社説を読み、それを自分の言葉で簡潔にまとめて書き出す」ことはおすすめの訓練方法です。適切な言葉遣いは一朝一夕に習得出来る技術ではありませんが、習得出来ればプレゼンだけでなく、様々なビジネスの場面で役立つ強力なツールとなります。興味を持たれた方は是非、インプット・アウトプットの機会を「意識的に」増やすことから始められたら良いのではないかと思います。

(担当:佐藤 啓