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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第九回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点を掘り下げる際の思考方法である「縦方向思考の原則」についてのお話をしました。前々回からのコラムからの復習も兼ねまして、話を上手に広げる際の基本を整理しますと、

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

これら3つの原則、まとめて「ピラミッド思考の原則」を考慮することが最初の重要なポイントでした。

そして「縦方向思考の原則」とは、

・なぜ(Why)?
・(だから)なに(So What)?

この2つのキーワードに基づいて「掘り下げ」と「まとめ上げ」を行う思考方法の様式であるということが前回のお話のポイントでした。

今回のコラムでは前回の話に関連し、同じ階層において話を網羅する、言い換えれば「話の広がり」を考える際の思考方法である「横方向思考の原則」について説明したいと思います。

横方向思考の原則とは、話の同一階層における「左右方向の論理的な広がり」を考える思考方法を意味します。言い換えれば、同じ階層における複数の詳細な内容を組み合わせることで理解・納得のしやすい話を構成し、説明することとなります。例としては前々回のコラムでも採り上げましたが、最上位階層のテーマが「店舗に対する新商品の提案」であるならば、一つ下の階層には「売上メリット」「コストメリット」「納期メリット」等を示して広がりを持たせること、あるいは「売上メリット」のレベルに着目するならば、その一つ下の階層には「お客様ニーズ」「デザイン」「機能性」等を示して広がりを持たせること、というイメージになります。

横方向思考に従って実際に考えを進めていく際には、「MECE」という考え方を適用することが一般的です。

MECE(ミーシー、もしくはミッシーと読みます)は、

Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive

という英語の頭文字の略で、簡単に言えば

漏れ・ダブりなし = 重複なく、かつ漏れなく事象を列記すること

を表します。

同じ階層での話の広がりを考える場合、単に思いついたアイデアを列記するだけでは、「実は同じようなことを言葉を換えて説明している」ケースや、「ポイント1でも費用の話」「ポイント2でも費用の話」というように、「費用」という共通キーワードが複数の項目に重複して見受けられるケース等が発生しがちです。このような場合に、MECEの考え方=「漏れ・ダブりなし」を適用することで「重複項目は共通キーワードによるまとめ上げ(=グループ化)を行い、一つの項目として表現し直す」ことが可能となります。

さらに、このような「まとめ上げ」による項目整理を行った場合には、同じ階層における項目が減ってしまいますので、「他に何かないか」と考える必要が生じます。このような場合にもMECEの「漏れ・ダブりなし」を適用することで、「漏れ」が何であるかを考えなければいけないことが分かります。

すなわち、常にMECEを意識することで、「論点の重複があればまとめ上げる」「論点の漏れがないかどうかを確認する」ことが可能となります。

ただし、MECEと一口に言っても、実際に「漏れ・ダブりなし」を自分自身で考えることには相応の「訓練」が必要となります。「重複=ダブり」については意識すれば分かりやすいのですが、「漏れ」については、現時点で意識に上っていないことを考えることになりますから、「考え続ける」ことが必要となります。

そこで、私自身もよく使っている方法として、今回は2つの方法をご紹介したいと思います。

一つ目の方法は「それ以外」というキーワードの活用です。

例えば、「外食」の分類を考えてみましょう。始めに思い浮かんだ項目が「和食」だとします。その時点で、いったん外食の分類を「和食」と「和食以外」として切り分けます。「和食」と「和食以外」ですと、重複も漏れもありませんから、MECEとなります。次のステップでは「和食以外」の構成要素を考えます。そうすると例えば「洋食」が浮かんだとしましょう。すると、外食の分類は「和食」「洋食」「和食・洋食以外」となります。

このように「ある項目」と「それ以外」という切り分けを考え続けていくことで、MECEの状態を保ったまま項目の列挙が可能となります。ただしこの場合、ある程度の項目の列挙を終えると「考えても新しい項目が出てこない」という状況になることがあります。その場合は「その他」というキーワードを同時に用いることで、MECEを保つことが出来ます。「最後は『その他』でまとめ上げる」と覚えておくと良いと思います。

二つ目の方法は「MECEフレームワーク」を活用することです。

MECE自体はアメリカのコンサルティング会社であるマッキンゼー社が1980年代に考案したものが発祥と言われていますが、それ以降、様々なビジネスの現場でMECEの切り口が考え出されてきました。言い換えれば、ビジネスにおいてよく使用されるMECEの切り口=「フレームワーク」がすでにいくつも確立されていますので、自分自身が考えを進める際の一つのツールとして活用することが可能ということになります。

私自身がよく使うフレームワークをいくつかご紹介しますと、

3C = Customer(お客様)、Competitor(競合)、Company(自社)
 →ビジネス全体を俯瞰的に捉える際のフレームワーク

4P = Price(価格)、Place(場所)、Product(製品・サービス)、Promotion(販促)
 →マーケティングのフレームワーク

SWOT(スウォットと読みます) = Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)
 →比較のフレームワーク

このようなものがあります。参考までに、弊社のセミナーでは「ロジカルシンキング入門」「シナリオ作成入門」「シンプルプレゼン実践」「ビジネスプラン入門」において、このMECEフレームワークの解説を行っています。

まとめますと、横方向思考の原則においては

・常にMECE=「漏れ・ダブりなし」を意識する
・MECEに考える際は「それ以外」というキーワードや、MECEフレームワークを活用する

以上の2点が重要なポイントとなります。

MECEを活用し、「漏れ・ダブりなし」で論点を列記することが出来ますと、話の流れが非常に分かりやすく、また「きちんと説明をしている」印象を相手に与えることが出来ます。言い換えれば「その話はもう聞いたよね?(=重複)」「これだけで話はおしまいなの?(=漏れ)」という状況を、MECEを活用することで回避できる可能性が高くなるのですね。

論理的で分かりやすい話の構成を考える上では、MECEの活用は必須のポイントとなります。「漏れ・ダブりなし」これを是非いつも意識しながら、論点の組み立てを考えてみることをお薦めします。

(担当:佐藤 啓