ビジネスパワーアップコラム<プレゼン編> 第十二回
前回のプレゼン編コラムでは、印象に残るプレゼンの実現に関しては「適切な言葉遣い」に気を配ることも重要なポイントであるというお話をしました。今回のコラムでは「シンプル・イズ・ベスト」と題して、シンプルかつ効果的なプレゼン資料の作成に関するお話をしたいと思います。
前々回のコラムで取り上げた「視覚情報の活用」及び前回のコラムのテーマである「適切な言葉遣い」については、いずれも「印象に残るプレゼン」を実現するために押さえておきたいポイントでしたが、これらを別の視点で考えたものが「シンプル・イズ・ベスト」すなわち「シンプルプレゼン」の考え方です。その根本にある考え方は「プレゼンの主人公は誰か?」ということになります。
想像してみて下さい。プレゼンにおいて、パワーポイントの画面上に写真や図や文字、表やグラフが所狭しと並んでいて、それを一つ一つ確認しなければ理解しにくいようなプレゼンを。このようなプレゼンに参加しているとき、皆さんは「画面」と「話者」のどちらにより注目しますでしょうか? おそらく大抵の場合は「画面」に目が行ってしまい、話者の話はもしかすると「半分程度」しか聞いていない、といった状況になってしまっているかもしれませんね。
パワーポイントは便利なツールですし、プレゼンにおいては活用すべきツールであることについては私も異論はありません。ただし、使い方に注意を払わないと、このような「話者不在」の「画面だけが注目される」プレゼンになってしまうケースがあります。言い換えれば「パワーポイントが主人公になってしまっているプレゼン」というイメージですね。
プレゼンの主人公はあくまでも「話者=プレゼンター=皆さんご自身」であるべきです。皆さんの話を引き立てる「サポート役」がパワーポイントのスライドに求められる役割であり、サポート役が前面に出てきてしまうのは「本末転倒」です。だからこそ、スライドには「話者の話を引き立てる」役割を意識して与えなければなりません。その手法の一つが「シンプルプレゼン」の考え方です。
以下、私が担当する「シンプルプレゼン実践」講座で使用しているサンプルスライドから、シンプルプレゼンのイメージを2つほど抜粋してご紹介したいと思います。
最初のサンプルは「イメージと文字」を活用したものです。抜粋したスライドに示す通りですが、
・60ポイント以上のフォント
・表の項目(見出しは除く)は6つまで、かつ1スライドにつき1点まで
・グラフはシンプルに、かつ1スライドにつき1点まで
・イメージを活用し、1枚20秒で伝える
このような「要件」を「シンプルプレゼン」の一つの考え方として、私は推奨しています。通常の作成方法(箇条書き等)と比較すると、制約が非常に厳しく感じられるかもしれませんが、実は「制約」こそが創造性を生み出す源泉となります。厳しい制約があるからこそ、「伝えたいこと」の要点を極限まで絞り込み、本当に必要な情報だけをスライドにまとめることが可能となります。シンプルに考えるためには「制約」が大切であること。これも是非意識していただけたらと思います。
次のサンプルは「文字のみ」を活用したものです。先程の「イメージと文字」を活用したものよりも、さらにシンプルなバージョンです。伝えたい内容を1スライドにつき最大でも10文字程度までに圧縮し、話者が伝える内容の要点をすぐに思い浮かべることが出来るように、順序を含めた構成を構築しています。参考までに、この際のフォントの大きさは「166ポイント」あるいは「199ポイント」が標準となります。理解のしやすさやインパクトの大きさはもちろん、準備時間を大幅に短縮できることも、この形式でプレゼン資料を作成する際のメリットです。私自身は最近ではこのスタイルを採ることが多いです。
いかがでしょうか。もしかすると2番目のサンプルについては「規格外」のイメージを受けるかもしれません。しかし、プレゼンの目的はあくまでも「相手の同意を得ること」です。そのための手段に「正解」はありません。効果的と思えるのであれば、既成概念に囚われない方法も活用すべきと私は考えます。興味をお持ちの方は、まずは社内等の「実験がある程度許される」プレゼンにおいて、トライしてみることをおすすめします。「シンプル・イズ・ベスト」の概念が自らの物となったとき、プレゼンのステージがまた一歩、先に進むと思います。
(担当:佐藤 啓)