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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十七回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、順序の原則を構成する3つのルールの最後である「重要度順」についての説明をしました。重要度順を考える際には、

・構成する各要素がMECEであること
・要素間には意味合い上の類似性もしくは関連性が存在すること
・上記2点が成立する際に、重要度の高い順から並べること

これらの点を押さえることが基本ではありますが、重要度順とはそもそも「誰にとって」重要なものであるかを考えること、言い換えれば

重要度を判断する基準

が最も重要であることを押さえておく必要がありました。

今回のコラムは、これまでのロジカルシンキング編の最後のポイントとして、論点の要約を行うことによる「思考の完成」プロセスの説明をしたいと思います。

論点要約プロセスの説明の前に、論理思考の基本である「ピラミッド思考の原則」をもう一度思い出してみましょう。
ピラミッド思考の原則とは

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

この3つのルールに従って思考のピラミッドを構築するということでした。その中の最初のポイントである「縦方向思考の原則」については

「掘り下げ」と「まとめ上げ」の思考方法

であることを第八回のロジカルシンキング編コラムでお話しました。

今回のコラムのポイントである「論点要約プロセス」は、この「掘り下げ」と「まとめ上げ」の思考様式である縦方向思考の原則と関連するポイントとなります。あるテーマを掘り下げていくつかの論点を述べることをイメージしてみましょう。このようにトップダウンで論点を掘り下げた場合、下位階層の論点グループの内容を再度要約することで、本当に上位階層の論点(テーマ)と話が関連するかどうか、言い換えれば縦方向思考の「論理的妥当性」が正しく成立しているかどうかをボトムアップで再確認する必要があります。

縦方向思考のトップダウンで論点を掘り下げる作業においては、「思いついた論点候補」を下位階層に列挙していくだけでは、その論点候補が本当に上位階層の論点と論理的に関連するかどうかは保証されません。下位階層に属する他の論点候補と照らし合わせ、それらの論点候補をまとめて「結局何が言えるのか」=「要約」を作成し、要約内容が上位階層と関連していることを明確化することで、初めて上位階層と下位階層が論理的に正しく繋がることを確認出来ます。言い換えれば、この要約作業を行うことで、階層間の論理構造が正しいことを確認することが可能となります。その点から、要約とは「思考を完成させる」プロセスであると言えます。

要約を行う際に注意すべきポイントは、

「要約が目指すものは、2つしかない」

ということです。言い換えると、ある論点グループを要約した場合、その要約の骨子は

・行動の考え=「一連の行動の結果」
・状況の考え=「一連の考えから推測される結論」

のいずれかになる、ということです。

行動の考えとは「ある行動を実施するための考え」であり、論点それぞれが「○○をする」のような「アクション」となっている場合の要約となります。すなわち、下位階層に示される一連のアクションを実行した結果として、上位階層に示されるテーマ(これも行動の考えの場合はアクションとなります)が実際に実施可能となるイメージが「行動の考え」です。この場合のポイントは、グループ内の各論点がそれぞれ「アクション」となっていることであり、アクションに繋がらない単純な「考え」が存在する場合には別の論点グループに整理し直す必要があります。

一方で状況の考えとは「理由・問題点・結論等の説明」であり、論点それぞれが「○○である」のような「考え」となっている場合の要約となります。この場合、下位階層に示される一連の考えに共通する類似点を見いだし、それが上位階層に示されるテーマ(状況の考えの場合は「より上位の考え」となります)に繋がるイメージとなります。

このように要約は「行動の考え」と「状況の考え」の2通りに分けることが出来ますが、この原則が役立つのは「論点を思いつくまま列記していった場合に、アクションと考えが混在してしまう」状況を整理する場面となります。例えば、業績改善をテーマに掘り下げるイメージを考えてみますと、論点としてまず思い浮かんだものが

<業績改善>
−モチベーション
−商材
−訪問回数を増やす

だとしましょう(あくまでも「思い浮かんだ=未整理」の状態と考えて下さい)。

「モチベーション」や「商材」は「考え」ですが、「訪問回数を増やす」は「行動」になります。
このように、ある論点グループ内に「行動」と「考え」が混在している場合は、論点を正しくまとめ上げることが出来ません。ですので、例えば「モチベーション」や「商材」は「現状」のグループに入れ、一方で「訪問回数を増やす」は「改善策」のグループに入れる必要があります。

まとめますと、

・トップダウン思考で掘り下げた内容を要約することで、階層間の論理構造の妥当性を確認出来る
・要約は「行動の考え」か「状況の考え」のいずれかの形式を採る
・行動と状況(考え)が論点グループ内に混在している場合は、グループを整理し直す必要がある

ということになります。このプロセスを経ることで、論理的な思考様式を完成させることが可能となります。

以上、十七回に渡り「ロジカルシンキング編コラム」をお送りしてきましたが、今回でロジカルシンキング編は完了となります。ロジカルシンキング=論理思考はビジネスを効果的に進める上での基本ツールの一つですので、是非

・言葉の定義を明確にする
・論理とは「相手の考え」とも関連するので、相手の疑問を常に予測する
・人間の思考回路はピラミッド構造である

こと、また具体的な論理思考の進め方として「ピラミッド思考の原則」すなわち、

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

という考え方があることを今一度ご確認いただき、皆様のお仕事にお役立ていただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十六回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、順序の原則を構成する3つのルールのうち、「構造順」についての説明をしました。構造順とは簡単に言えば「エクセルの並べ替え」と同じようなイメージの順序指定であり、その際のキーポイントは、

・構成する各要素がMECEであること
・事象が現れる順序、もしくは数値化できる場合は昇順もしくは降順で並べること
・プロセス(=フローチャート)が存在する場合は、その順序を適用すること

ということでした。「北→南」「左→右」「大→小」「高い→安い」「重い→軽い」等については、場合によっては「思い浮かんだ順に」表記してしまう可能性もありますので、「比較可能な場合」や「プロセスが明確に存在する場合」の順序については、「構造順」を改めて意識することが重要でした。

今回のコラムでは、順序の原則を構成する最後のルールである「重要度順」についての説明をしたいと思います。

重要度順の基本的な考え方はその言葉通りで「重要なものから順番に並べる」こととなります。すなわち、

・構成する各要素がMECEであること
・要素間には意味合い上の類似性もしくは関連性が存在すること
・上記2点が成立する際に、重要度の高い順から並べること

これらの点が重要度順を考える際の基本的なポイントとなります。

ただし、重要度順を考える際には、「誰にとって」重要なものであるかを考えること、言い換えれば

重要度を判断する基準

を常に意識する必要があります。

例えば、プレゼンにおいてある提案を行うとしましょう。自分自身は「品質」「コスト」「納期」に関する説明を行う予定であり、その中でも「品質」に力点を置いて話をしたいとします。ところが、相手方の一番の関心事が「コスト」だったら、話がかみ合わなくなってしまう可能性がありますね。

この点から分かるように、重要度を判断する基準は「相手方にある」点を認識することが重要度順を考える際の一番のポイントとなります。
言われてみれば当たり前の話に感じるかもしれませんが、実際のケースでは「自分が最も関心のあること」や「自分が最も伝えたいこと」を「重要」と考えてしまうこともよくあります。

このような「行き違い」を防ぐための最も効果的な方法は「相手の疑問を予測する」ことです。重要度を判断する基準が相手方にあるのであれば、相手が最も疑問に思う内容こそが、裏返せば相手にとって最も重要なポイントとなります。相手の疑問の予測方法については、第四回のロジカルシンキング編コラムにて説明をした通りですが、「話の順番を決める」上でも相手の疑問を予測することが非常に重要な役割を果たすことを、改めて認識していただければと思います。

以上が重要度順を考える際のポイントとなります。重要度順も前回の構造順と同様、普段から意識せずに使用している順序思考ですが、大切なポイントは

重要度を判断する基準は「相手方にある」

ことになります。この点を是非意識して、重要度順を検討していただければと思います。

ここまでの3回のコラムで「時系列順」「構造順」「重要度順」の考え方を説明してきました。論理的な順序構成はこれら3つのルールの「いずれか」を適用することで可能となることは第十三回のロジカルシンキング編コラムで説明した通りですが、これらの順序のいずれかを「適用可能」であるためには、各構成要素が正しくグループ化されている必要があります。

言い換えれば、もし、ある論点グループの順序構成を検討した場合に、「時系列」「構造」「重要度」のいずれも適用できない、もしくはグループ内の一部にしか適用できないのであれば、その論点グループはそもそも「グループ化」が正しく行われていない可能性が高くなります。例えて言うならば、果物のグループを考える場合に、「りんご」「なし」「みかん」「くるま」をピックアップしている状態です。りんご・なし・みかんまでは順序を考えられると思いますが、ここに「くるま」が存在すると論点グループとしては成立しなくなってしまいます。このように、順序構成を考えることは「論点グループの妥当性確認」を兼ねていることも併せて押さえていただければと思います。

第十三回のコラムでも述べた通りですが、個別の論点に関する「掘り下げ」「広がり」「関連づけ」をきちんと行っていたとしても、「説明の順序」が適切でなければ、全体としての効果は大きく損なわれてしまいます。ですので、「論理的な話の構成を考える」上では、「順序」が非常に大切な役割を果たすことを改めて意識していただければと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十五回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、順序の原則を構成する3つのルールのうち、「時系列順」についての説明をしました。時系列順で順序を決定する際の基本的な考え方は、

・因果関係が明確である場合は、説明の順序は「原因→結果」の時系列順となる
・実行ステップの順序が明確である場合は、説明の順序は「ステップ順通り」の時系列順となる

ということでした。
ただし、時系列順での説明には「結果が説明の最後まで見えない」という弱点が存在しますので、プレゼン等で時系列順に基づいて説明を行う場合には、

・始めに結論を簡潔に述べる
・その後で要点を時系列順に示す

このような工夫も必要ということがポイントでした。

今回のコラムでは、順序の原則を構成する3つのルールの2番目である「構造順」についての説明をしたいと思います。

構造順とは、簡単に言えば「エクセルでの並べ替え」と同じようなイメージで並べ替えることを意味します。
すなわち「目に見える様子を順序に反映させる」ことが、構造順を考える際の基本的なイメージとなります。

簡単な例を挙げますと、

・東西南北
・上下左右
・大中小
・高い安い
・重い軽い

このような「位置」や「数量」の比較が可能な場合は、全て構造順となります。

構造順を考える際のキーポイントは、以下の3点となります。

・構成する各要素がMECEであること
・事象が現れる順序、もしくは数値化できる場合は昇順もしくは降順で並べること
・プロセス(=フローチャート)が存在する場合は、その順序を適用すること

(なお、MECEについての詳細は第九回のコラムをご参照下さい)

まず、各要素がMECEであることは、構造順で順序を考える際の基本要件となります。構造順とは「目に見える様子を順序に反映させること」と説明しましたが、この「目に見える様子」がきちんと「漏れ・ダブりなし」の状態でなければ、比較を行うことが出来ません。そのため、各要素がMECEであることが構造順を検討する際の基本となります。

そして、各要素がMECEである場合には、「比較」を行うか「プロセス」に従うかのいずれかで順序を決定します。比較の場合は例えば「北→南」「左→右」のように「事象が現れる順序」、もしくは「大→小」「高い→安い」「重い→軽い」のように「数値化できる場合は昇順もしくは降順」で順序を決定します。

ここで押さえておきたいのは「プロセス(=フローチャート)順」の考え方です。例えば、MECEフレームワークの一つに「ビジネスシステム(バリューチェーン)」と呼ばれるものがあります。これは

研究開発 → 調達 → 製造 → マーケティング → 流通 → 販売 → アフターサービス

というプロセス順のことを指し、具体的には「製品が企画されて、製造されて、販売されて、お客様に使用される」という流れに対応する組織構造のフローチャートを意味します。

もし、このような「企画・製造・販売」という話を全体的に論じたいのであれば、ビジネスシステム(バリューチェーン)の流れに従い、研究開発からアフターサービスまでの順で話を論じる必要があります。マーケティングから始まって、調達、研究開発、販売、流通・・・などという流れにはならない、ということですね。
(もちろんですが、個別の要素についての重要度で判断をしたい場合にはこの限りではありません)

以上が構造順で順序を考える際のポイントとなります。構造順は決して難しい話ではなく、「エクセルの並べ替え」と同様に普段から意識せずに使用している考え方でもあります。ただし、「北→南」「左→右」「大→小」「高い→安い」「重い→軽い」等については、場合によっては「思い浮かんだ順に」表記してしまう可能性もあります。そのため、「比較可能な場合」や「プロセスが明確に存在する場合」の順序については、「構造順」をぜひ意識して記載をしていただければと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十四回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、ピラミッド思考の原則を構成する最後の原則事項である「順序の原則」についての概要を説明しました。ある論点グループ内での順序を考える際には、

・時系列順=因果関係もしくは実行ステップの順序
・構造順=目に見える様子をそのまま書き表した順序
・重要度順=類似性に基づくグループ内の度合いによる順序

この3つの順序の「どれか一つ」を適用することになりますので、この点を意識しながら順序の検討を進める必要があることがポイントでした。

今回のコラムからは、これらの順序に関する思考方法について詳しく採り上げていきたいと思います。第一回目は「時系列順」です。

時系列順とは「因果関係もしくは実行ステップの順序」と説明をしましたが、時系列順を適用することが可能な論点グループにおいては、原因と結果の関係である「因果関係」、もしくは実行プロセスにおける各「ステップ」の前後関係が明確であることが必要となります。以下、それぞれの簡単な例を示しながら解説をしましょう。

例1:お客様からのクレーム発生に関する報告

1. クレーム発生原因の確認
2. クレーム発生状況の整理
3. お客様への対応状況の整理
4. 再発防止策の確認

まず、因果関係に関する簡単な例を考えてみます。例1に示す「お客様からのクレーム発生に関する報告」においては、「2. クレーム発生状況の整理」(=実際にどのようなクレームが発生したのか)をまずは報告することを通常は考えると思います。ですが、「○○というクレームが発生しました」という報告だけでは、クレームが発生した「原因」や、クレーム発生に伴う対応の「結果」等が不明確となり、報告としては不十分な印象となります。

このような場合は、クレームが発生した「原因」や、対応の「結果」までを含めて情報を整理し直すことで、論点が明確になります。例えば上記の事例では、まず「1. クレーム発生原因の確認」により、クレームを引き起こしたそもそもの要因に遡ります。その上で、「クレームを生み出す原因」に基づく「結果」として、「2. クレーム発生状況の整理」をし、実際のクレーム内容を報告します。さらに、「3. お客様への対応状況の整理」では、実際に発生したクレームを「原因」と考え、その「結果」としての対応状況をまとめます。最後に「4. 再発防止策の確認」で、今回のクレーム対応結果を「原因」に置き換え、その「結果」として、将来的に同様なクレームの発生を防止するための対策について触れています。

ここでの大切なポイントは、この例における1~4の論点は、それぞれが「原因」と「結果」の関係、すなわち、1を原因として2の結果が生じ、2を原因として3の結果が生じ、3を原因として4の結果が生じている、ということになります。このような「因果関係」が明確に考えられる場合には、原則として説明の順序はこの「原因→結果」の時系列順となります。

それでは、次は実行ステップ順に関する簡単な例を考えてみます。

例2:生産性向上プロジェクトの立ち上げ

1. 現状の業務フローの確認
2. 現場でのヒアリングの実施
3. 改善点の洗い出し

例2に示す「生産性向上プロジェクトの立ち上げ」においては、「1. 業務フローの確認」を行うことで「2. 現場でのヒアリングの実施」が出来、さらに「2. 現場でのヒアリングの実施」を行うことで「3. 改善点の洗い出し」を行うことが可能となります。この場合、ステップ1を実行しなければステップ2は実行できず、さらにステップ2を実行しなければステップ3は実行できませんので、説明の順序は「ステップ1→ステップ2→ステップ3」の時系列順となります。

以上が時系列順で順序を決定する際の基本的な考え方となります。まとめますと、

・因果関係が明確である場合は、説明の順序は「原因→結果」の時系列順となる
・実行ステップの順序が明確である場合は、説明の順序は「ステップ順通り」の時系列順となる

となります。

ただし、実際の説明の際には、上記の順序とは別に「結論」も意識して考える必要があります。時系列順での説明の弱点は

「結果が説明の最後まで見えない」

ことにあります。従って、プレゼン等で時系列順に基づいて説明を行う場合には、

・始めに結論を簡潔に述べる
・その後で要点を時系列順に示す

このような工夫も必要です。

以上の点に注意をし、時系列順での論点整理及び順序決定を行ってみていただければと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十三回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点の関連づけを考える際の思考方法である「帰納法」についてのお話をしました。帰納法で考える際には、

1. 複数の論点に存在する「類似点」を見い出すこと
2. その類似点に適用可能な「共通キーワード」を考えること

以上の2点に留意することが基本であることを押さえておく必要がありました。

これまでの3回のコラムでは「論点同士の関連づけ」に関する考え方を採り上げてきましたが、ここでもう一度「ピラミッド思考の原則」を思い出してみたいと思います。第七回のロジカルシンキング編コラムにてお話しました通り、話を上手に広げる際には「ピラミッド構造」を意識することが重要でした。ピラミッド思考の原則とは、

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

この3つの原則をまとめ上げたものであり、物事を考えるときには「掘り下げ」「広がり」「優先順位」の3点を常に考慮する必要がありました。

これまでのコラムではこれら3つの原則事項のうち、「縦方向思考の原則」「横方向思考の原則」及びそれに関連する「論点の関連づけ」についての説明をしてきました。今回のコラムからは、ピラミッド思考の原則を構成する最後の要素である「順序の原則」についてのお話をしていきたいと思います。

皆さんは、プレゼンや商談、あるいは社内会議等の場面で、「聞きたい話はこの話ではないのに」「いつになったら本題が始まるのだろう」などと感じたことはありますでしょうか? これまで説明をしてきた「掘り下げ」「広がり」及び「関連づけ」は、論理的に話を展開する上での重要なポイントであることには間違いありません。しかし、この「いつになったら本題が・・・」というイメージで分かるとおり、「説明の順序」が適切でなければ、個別の論点・話題がどれだけ論理的に説明されていたとしても、全体としての効果は大きく損なわれてしまいます。ですので、「論理的な話の構成を考える」上では、「順序」も非常に大切な役割を果たすことをまずはイメージしていただければと思います。

説明の順序を検討する際の最初のポイントは、自身が使用している論証法が「演繹法」と「帰納法」のどちらであるかを確認することとなります。演繹法は「ロジックライン」のイメージから分かるように、「大前提 → 小前提 → 結論」という流れが固定されています。そのため、演繹法を使用している場合には、ロジックラインの流れに従って順番を構成すればよいことになります。一方で、帰納法を使用している場合には、グループ化した各構成要素同士の順序を論理的に決定する必要があります。例えば東南アジアの構成要素の説明順序について、「ベトナム」「タイ」「マレーシア」と説明するか、「タイ」「ベトナム」「マレーシア」と説明するかを「論理的な理由に基づいて」決めなければならないということですね。

では、実際に「論理的な順序」を考える上での具体的な方法を説明したいと思います。順序の原則においては、論点同士の順序に関し、以下の3つの順序のいずれかを適用します。

・時系列順
・構造順
・重要度順

これら3つの順序の意味を簡単に説明しますと、

・時系列順=因果関係もしくは実行ステップの順序
・構造順=目に見える様子をそのまま書き表した順序
・重要度順=類似性に基づくグループ内の度合いによる順序

となります。

説明の順序を考える上で「適切な順番」に悩んでしまうケースはよくあると思います。ですが、実際の「論理的な順序」を考える上では、実はこの3通りのパターンのいずれかが必ず適用されることになります。従って「順序構成については『時系列』『構造』『重要度』のいずれかしか存在しない」と覚えてしまえば、シンプルに考えを進めることが可能となります。

「時系列順」「構造順」「重要度順」の詳細については次回以降のコラムで改めて解説していきますので、今回のコラムにおいては、まずは

・論理思考においては適切な順序構成が重要である
・順序構成については「時系列」「構造」「重要度」の3パターンしか存在しないので、そのいずれかを適用すればよい

以上のイメージをしっかりつかんでいただければ幸いです。

(担当:佐藤 啓