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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十二回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点の関連づけを考える際の思考方法である「演繹法」についてのお話をしました。演繹法で考える際には、

小前提(二番目の論点)は大前提(最初の論点)に対する「コメント」と考えられるかどうか

を確認することが重要であり、この確認に問題がなければ

論点を繋ぎ合わせた「ロジックライン」がイメージできる

という点を押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、もう一つの関連づけ思考方法である「帰納法」についてのお話をしたいと思います。

前々回のロジカルシンキング編コラムにおいて、帰納法とは

論点同士の「類似性」に基づく関連づけを考えること

であることを紹介しました。今回も簡単な例を示しながら、帰納法で考える際の基本的なポイントを説明しましょう。

例1
・休日のデパートは混んでいる
・休日の映画館は混んでいる
・休日の遊園地は混んでいる
 →休日の外出は混んでいる

例2
・日本企業がタイに進出した
・アメリカ企業がタイに進出した
・ドイツ企業がタイに進出した
 →先進国の企業がタイに進出した

帰納法とは簡単に言えば「共通キーワードによるまとめ上げ=グループ化」を考えることであり、その際のキーポイントは、

1. 複数の論点に存在する「類似点」を見い出すこと
2. その類似点に適用可能な「共通キーワード」を考えること

となります。先程の例1では「デパート」「映画館」「遊園地」が論点における類似点となり、例2では「日本」「アメリカ」「ドイツ」が類似点となります。そして、これらの類似点にそれぞれ適用することが可能な「共通キーワード」を新たに考え出すプロセスが、帰納法を用いる際の重要なポイントとなります。

例1の「デパート」「映画館」「遊園地」であれば、例えば「外出」という共通キーワードが想定可能ですし、例2の「日本」「アメリカ」「ドイツ」であれば、「先進国」という共通キーワードを適用可能と考えられます。このように、それぞれの類似点を「グループ」としてひとまとめに扱い、その「グループ」の特色を表すキーワードを一語の「名詞」で定義することが、帰納的理由付けを考える際の基本技術となります。

次に、帰納法で考える際の注意点を見ていきましょう。まずは、以下の例を見てみましょう。

例3
・日本企業がタイに進出した
・日本企業がコートジボアールに進出した
・日本企業がパラグアイに進出した

この例3において、類似点を見いだすことが可能でしょうか?(ちなみに、コートジボアールはアフリカの国、パラグアイは南米の国です)。地理的にもバラバラのエリアですし、この情報だけからですと、類似点を想像することは難しいと思います。

帰納的に考える際には、同じ「主部」または「述部」を持つ論点同士をグループ化することが大前提となります。ただし、グループ化を適用するためにはその上位階層に来る「共通キーワード」を各論点が説明できなければなりません。言い換えれば、ピラミッド思考における縦方向思考=階層の上下関係を想像できない場合、グループ化は出来ないことになります。例3であれば「タイ」「コートジボアール」「パラグアイ」の上位階層に存在する共通キーワードは想像することが難しいですから、これは「帰納的な考え」ではなく、単なる「情報の列挙」と考えた方が良いことになります。

次の例はいかがでしょうか。

例4
・日本企業がタイに進出した
・日本企業がベトナムに進出した
・日本企業がマレーシアに進出した
・日本企業がパラグアイに進出した

この例4においては、「タイ」「ベトナム」「マレーシア」までは「東南アジア」という共通キーワードが適用できそうですが、パラグアイが入ってしまうと、共通キーワードの定義が難しくなります。このように、グループ化を行う際には「不適切要素の見極め」と「必要に応じた除外」を行う必要があります。今回の例であれば、パラグアイは別の論点グループに整理し直す必要があります。

以下の例も見てみましょう。

例5
・日本企業がタイに進出した
 →日本企業が東南アジアに進出した

この例5においては、日本企業がタイに進出したという事実「のみ」が分かっている状態で、日本企業が東南アジアに進出したと論じています。ですが、タイに進出したという事実のみを持って、東南アジアと一足飛びに論じることには無理があります。この例で気をつけなければならないことは「帰納法を使用できるのは、あくまでも論点が『複数』存在する場合のみ」という点になります。帰納法は「共通キーワードによるグループ化」を考える論証法ですから、そもそもグループ化を行う要素が複数存在しない場合は帰納的に考えることが出来ません。従って、確実に示せる内容が一つしか存在しないケースにおいては、演繹法を用いることになります。上記の例であれば、

例5′
・日本企業がタイに進出した → タイは人件費が安い → 東南アジアは人件費が安い → 日本企業は(タイを含む)東南アジアに進出した

例えばこのように、「人件費の安さ」をロジックラインに含めた演繹法を用いることで、結論を示すことが可能となります。

まとめますと、帰納法で考える際には

1. 複数の論点に存在する「類似点」を見い出すこと
2. その類似点に適用可能な「共通キーワード」を考えること

以上の2点に留意することが基本となります。さらに

・類似点や共通キーワードが想定できない場合は、帰納法の適用は出来ない
・グループ内に「不適切要素」がある場合は、除外して考える
・確実に示せる内容が一つしか存在しない場合は、演繹法で考える

これらの注意点を押さえておく必要があります。

実は帰納法については「共通キーワード」を新たに定義する必要があること、言い換えれば「新しい考えを導出する」必要があることから、演繹法よりも高度な思考回路が求められます。ただし、この「共通キーワード=新しい考え」とは「要点」を意味しますので、帰納法を用いた場合には「要点を先に示してから、その詳細を述べる」ことが可能となります。そのため、聞き手側の立場からすると、帰納法の論理展開は演繹法の場合と比較して遙かに理解しやすいものとなります。前回と今回でお話した「演繹法」と「帰納法」の違いを是非理解し、論理的な説明に役立てていただければと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十一回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点の関連づけを考える際の思考方法である「演繹法」と「帰納法」についての基本をご紹介しました。演繹法・帰納法はそれぞれ

・演繹法=論点同士の「意味合い」に基づく関連づけを考えること
・帰納法=論点同士の「類似性」に基づく関連づけを考えること

このような特色を持っており、それぞれを区別した上で使い分けることが論理思考においては重要となります。

今回のコラムでは「演繹法」について、もう少し掘り下げたお話をしたいと思います。

演繹法とは上記の通り、「意味合い」に基づく関連づけを考えることを意味します。まずは改めて演繹法の簡単な事例を示し、演繹的に考える際の基本的なポイントを説明しましょう。

例1
・人間はいつか死ぬ(大前提)
・ソクラテスは人間である(小前提)
・ソクラテスはいつか死ぬ(結論)

例2
・鳥は空を飛ぶ(大前提)
・私は鳥だ(小前提)
・私は空を飛ぶ(結論)

演繹法では、始めに実在する状況について述べます。これを大前提と呼びます。次に、もう一つの実在する関連状況を述べます。これを小前提と呼びます。最後に、これらの大前提・小前提が同時に存在する意味について論じます。これが結論となります。

以上の流れで演繹法を考える際には、大前提と小前提の間の「意味合い」に基づく関連性が実際に存在するかどうかの確認を行うことが重要なポイントとなります。この確認作業は具体的には、小前提の表記が大前提の表記の「主部」か「述部」のいずれかを補足することが出来ているか、言い換えれば小前提は大前提に対する「コメント」と考えられるかどうかをイメージすることで行われます。

先程の例1であれば、小前提(ソクラテスは人間である)は、大前提の主部(人間)を補足しています。例2であれば、小前提(私は鳥だ)は、同じく大前提の主部(鳥)を補足しています。このように補足=コメントを作成するすることで、大前提と小前提の間に「意味合い」上の関連性が構築されることとなります。そして、これら2つの前提条件が両方とも成立する(=「意味合い」の上で関連する)ことの意味を「結論」としてまとめることになります(ちなみに「私は鳥だ」は、鳥がそう思っている分には事実となります。人間がそう思っていたら少し問題ですが・・・)。

言い換えれば、演繹法で考えることが可能な場合には「ロジックライン」と呼ばれる、論点同士を矢印で繋げた一本の直線をイメージすることが可能となります。例えば、上記の例1であれば、

人間はいつか死ぬ → ソクラテスは人間である → ソクラテスはいつか死ぬ

例2であれば、

鳥は空を飛ぶ → 私は鳥だ → 私は空を飛ぶ

このようなロジックラインを構築することが可能となります。すなわち

「A(だから)→ B(だから)→ C(となる)」

というイメージを思い浮かべることが可能であれば、「演繹的に論点が繋がっている」ことになります。

では、以下の例はいかがでしょうか。

例3
すべてのウサギはとても速く走る → ある馬はとても速く走る → ある馬はウサギである

この例だけを見ると、どう考えても話がおかしいですよね。馬がウサギであるわけはありません。ただし、このような「論理的な関連性が実際には存在しない」にも関わらず、見かけ上は演繹的に考えたつもりで、異なる論点を繋いでしまうことは実際の思考上はあり得る話です。

演繹的に考える際のポイントをもう一度確認しましょう。演繹法においては

小前提の表記が大前提の表記の「主部」か「述部」のいずれかを補足することが出来ているか
言い換えれば小前提は大前提に対する「コメント」と考えられるかどうか

この点をイメージすることで、大前提と小前提の間の論理的な関連性を確認することが可能となります。

先程の例3の場合は、第一ポイント(ウサギ)と第二ポイント(馬)の間には共通の述部(速く走る)は確かに存在していますが、第二ポイントは第一ポイントのコメント(あるいは「述部」の補足)ではなく、全く独立した事象となっています。従って、第一ポイントと第二ポイントの間には論理的な関連性は存在しませんので、第三ポイントのような結論を導出することは出来ない、ということになります。

まとめますと、演繹法で考える際には

小前提は大前提に対する「コメント」と考えられるかどうか

を確認することが重要であり、この確認に問題がなければ

論点を繋ぎ合わせた「ロジックライン」がイメージできる

ことになります。

演繹法は別名「三段論法」とも言いますが、人間の思考様式としては極めて一般的なものです。ロジックライン的に「A(だから)→ B(だから)→ C(となる)」と論点を繋ぎ合わせていくことは、「演繹法」という言葉自体は知らなかったとしても、一般的には普通に行っていることだと思います。このように演繹法は思考様式としてはイメージしやすいものであり、前述の「ロジックライン」のイメージに気をつければ論点をいくつでも繋ぎ合わせることが出来ます。

ただし、その裏返しとして、話を聞く立場からすると、話自体が「回りくどい」「重苦しい」といった印象を持ってしまうことが多くなります。従って、プレゼン等の「簡潔な説明」が求められる場では、演繹的な論点の展開はあまり行わない方がよいでしょう。このような場では、次回のコラムでお話する「帰納法」を活用することで、より簡潔かつ論理的な説明が可能となります。この点も併せて覚えていただければと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第十回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点の広がりを考える際の思考方法である「横方向思考の原則」についてのお話をしました。横方向思考の原則においては、

・常にMECE=「漏れ・ダブりなし」を意識する
・MECEに考える際は「それ以外」というキーワードや、MECEフレームワークを活用する

以上の2点が重要なポイントとなることを押さえておく必要がありました。

今回のコラムでは、これまで採り上げてきた「縦方向思考」「横方向思考」に基づいて論点の掘り下げや広がりを考える際に、併せて考えておく必要がある「論点の関連づけ」に関しての基本的なお話をしたいと思います。

ロジカルシンキング=論理思考の「論理」というキーワードの意味をもう一度考えてみましょう。論理とは「話の繋がり」言い換えれば「関連づけ」を意味する言葉であり、「論理的」であるということは、「複数の論点同士の『繋がり=関連づけ』の理由が明確であり、理解しやすい」ということを意味します。従って、論理的に話を広げる上では、この「繋がり=関連づけ」を的確に設定することが重要であることが分かると思います。縦方向思考では上下の階層に存在する論点同士の関連づけが的確かを確認する必要がありますし、横方向思考では同じ階層に存在する複数の論点の関連づけの意味するところを考える必要があるわけですね。

論点の関連づけを考える際には、以下の2つの論証法を用いることが一般的となります。

・演繹(えんえき)法
・帰納(きのう)法

演繹法については「三段論法」という言葉の方がなじみがあるかもしれません。演繹法とは「大前提→小前提→結論」のように、互いに意味の上で関連し合う二つ(またはそれ以上)の前提があり、それらが同時に成立することが何を意味するかを考える論証法です。

演繹法で考えた場合、例えば、

・人間はいつか死ぬ(大前提)
・ソクラテスは人間である(小前提)
・ソクラテスはいつか死ぬ(結論)

というイメージの流れが構成されます。この場合、「人間」という名詞が大前提と小前提の間に共通に存在し、それが大前提と小前提の関連づけを形成しています。そして、それら二つの関連し合う前提がどちらも成立することから、「(人間である)ソクラテスはいつか死ぬ」という結論を導出することが可能となります。

一方で帰納法とは、複数の論点に存在する「共通キーワード」を考え、その共通キーワードが何を意味するかを考える論証法です。言い換えれば「共通キーワードによるまとめ上げ」というイメージになります。

帰納法で考えた場合、例えば、

・休日のデパートは混んでいる
・休日の映画館は混んでいる
・休日の遊園地は混んでいる

これらの状況に共通する「キーワード」を考えることになります。例えば「デパート・遊園地・映画館」の共通キーワードとしては「外出」が一つの候補になります。そうすると、これらの状況は「休日の外出は混んでいる。例えば、デパート・遊園地・映画館」というように、「外出」というキーワードの下側に、「デパート・遊園地・映画館」というキーワードが連なる「階層構造」を持つ構造に関連づけが変化したことが分かると思います。

このように、演繹法・帰納法のどちらを用いても、論点間の「関連づけ」を確認可能であることがイメージできると思います。演繹法の場合であれば、大前提と小前提の間の「意味合いに基づく関連」を、帰納法の場合であれば、複数の項目間の共通キーワードによる「類似性に基づく関連」を考えることになります。

まとめますと、

・演繹法=論点同士の「意味合い」に基づく関連づけを考えること
・帰納法=論点同士の「類似性」に基づく関連づけを考えること

このようになります。

演繹法・帰納法の詳細及びそれぞれを考える上での注意点は、来週・再来週のコラムで2回に渡ってご紹介したいと思いますが、演繹法及び帰納法は論点を整理し、その関連づけを考える際には必須の思考方法となります。今回のお話に関しては、まずは演繹法・帰納法という言葉自体と、上記の例で採り上げた、それぞれを考える際の基本的なイメージや事例を理解していただけたらと思います。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第九回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点を掘り下げる際の思考方法である「縦方向思考の原則」についてのお話をしました。前々回からのコラムからの復習も兼ねまして、話を上手に広げる際の基本を整理しますと、

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

これら3つの原則、まとめて「ピラミッド思考の原則」を考慮することが最初の重要なポイントでした。

そして「縦方向思考の原則」とは、

・なぜ(Why)?
・(だから)なに(So What)?

この2つのキーワードに基づいて「掘り下げ」と「まとめ上げ」を行う思考方法の様式であるということが前回のお話のポイントでした。

今回のコラムでは前回の話に関連し、同じ階層において話を網羅する、言い換えれば「話の広がり」を考える際の思考方法である「横方向思考の原則」について説明したいと思います。

横方向思考の原則とは、話の同一階層における「左右方向の論理的な広がり」を考える思考方法を意味します。言い換えれば、同じ階層における複数の詳細な内容を組み合わせることで理解・納得のしやすい話を構成し、説明することとなります。例としては前々回のコラムでも採り上げましたが、最上位階層のテーマが「店舗に対する新商品の提案」であるならば、一つ下の階層には「売上メリット」「コストメリット」「納期メリット」等を示して広がりを持たせること、あるいは「売上メリット」のレベルに着目するならば、その一つ下の階層には「お客様ニーズ」「デザイン」「機能性」等を示して広がりを持たせること、というイメージになります。

横方向思考に従って実際に考えを進めていく際には、「MECE」という考え方を適用することが一般的です。

MECE(ミーシー、もしくはミッシーと読みます)は、

Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive

という英語の頭文字の略で、簡単に言えば

漏れ・ダブりなし = 重複なく、かつ漏れなく事象を列記すること

を表します。

同じ階層での話の広がりを考える場合、単に思いついたアイデアを列記するだけでは、「実は同じようなことを言葉を換えて説明している」ケースや、「ポイント1でも費用の話」「ポイント2でも費用の話」というように、「費用」という共通キーワードが複数の項目に重複して見受けられるケース等が発生しがちです。このような場合に、MECEの考え方=「漏れ・ダブりなし」を適用することで「重複項目は共通キーワードによるまとめ上げ(=グループ化)を行い、一つの項目として表現し直す」ことが可能となります。

さらに、このような「まとめ上げ」による項目整理を行った場合には、同じ階層における項目が減ってしまいますので、「他に何かないか」と考える必要が生じます。このような場合にもMECEの「漏れ・ダブりなし」を適用することで、「漏れ」が何であるかを考えなければいけないことが分かります。

すなわち、常にMECEを意識することで、「論点の重複があればまとめ上げる」「論点の漏れがないかどうかを確認する」ことが可能となります。

ただし、MECEと一口に言っても、実際に「漏れ・ダブりなし」を自分自身で考えることには相応の「訓練」が必要となります。「重複=ダブり」については意識すれば分かりやすいのですが、「漏れ」については、現時点で意識に上っていないことを考えることになりますから、「考え続ける」ことが必要となります。

そこで、私自身もよく使っている方法として、今回は2つの方法をご紹介したいと思います。

一つ目の方法は「それ以外」というキーワードの活用です。

例えば、「外食」の分類を考えてみましょう。始めに思い浮かんだ項目が「和食」だとします。その時点で、いったん外食の分類を「和食」と「和食以外」として切り分けます。「和食」と「和食以外」ですと、重複も漏れもありませんから、MECEとなります。次のステップでは「和食以外」の構成要素を考えます。そうすると例えば「洋食」が浮かんだとしましょう。すると、外食の分類は「和食」「洋食」「和食・洋食以外」となります。

このように「ある項目」と「それ以外」という切り分けを考え続けていくことで、MECEの状態を保ったまま項目の列挙が可能となります。ただしこの場合、ある程度の項目の列挙を終えると「考えても新しい項目が出てこない」という状況になることがあります。その場合は「その他」というキーワードを同時に用いることで、MECEを保つことが出来ます。「最後は『その他』でまとめ上げる」と覚えておくと良いと思います。

二つ目の方法は「MECEフレームワーク」を活用することです。

MECE自体はアメリカのコンサルティング会社であるマッキンゼー社が1980年代に考案したものが発祥と言われていますが、それ以降、様々なビジネスの現場でMECEの切り口が考え出されてきました。言い換えれば、ビジネスにおいてよく使用されるMECEの切り口=「フレームワーク」がすでにいくつも確立されていますので、自分自身が考えを進める際の一つのツールとして活用することが可能ということになります。

私自身がよく使うフレームワークをいくつかご紹介しますと、

3C = Customer(お客様)、Competitor(競合)、Company(自社)
 →ビジネス全体を俯瞰的に捉える際のフレームワーク

4P = Price(価格)、Place(場所)、Product(製品・サービス)、Promotion(販促)
 →マーケティングのフレームワーク

SWOT(スウォットと読みます) = Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)
 →比較のフレームワーク

このようなものがあります。参考までに、弊社のセミナーでは「ロジカルシンキング入門」「シナリオ作成入門」「シンプルプレゼン実践」「ビジネスプラン入門」において、このMECEフレームワークの解説を行っています。

まとめますと、横方向思考の原則においては

・常にMECE=「漏れ・ダブりなし」を意識する
・MECEに考える際は「それ以外」というキーワードや、MECEフレームワークを活用する

以上の2点が重要なポイントとなります。

MECEを活用し、「漏れ・ダブりなし」で論点を列記することが出来ますと、話の流れが非常に分かりやすく、また「きちんと説明をしている」印象を相手に与えることが出来ます。言い換えれば「その話はもう聞いたよね?(=重複)」「これだけで話はおしまいなの?(=漏れ)」という状況を、MECEを活用することで回避できる可能性が高くなるのですね。

論理的で分かりやすい話の構成を考える上では、MECEの活用は必須のポイントとなります。「漏れ・ダブりなし」これを是非いつも意識しながら、論点の組み立てを考えてみることをお薦めします。

(担当:佐藤 啓

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ビジネスパワーアップコラム<ロジカルシンキング編> 第八回

前回のロジカルシンキング編コラムでは、論点を展開する際の基本的な流れである「話の広げ方」についてのお話をしました。話を上手に広げる際は、

・掘り下げ=「縦方向思考の原則」
・広がり =「横方向思考の原則」
・優先順位=「順序の原則」

これら3つの原則、まとめて「ピラミッド思考の原則」を考慮することで、論理的に理解しやすい話の構成が可能になるということがポイントでした。

今回のコラムでは前回の話に関連し、論点を掘り下げる際の思考方法である「縦方向思考の原則」についてもう少し詳しく説明したいと思います。

縦方向思考の原則とは、話の階層における「上下方向の論理的な繋がり」を考える思考方法を意味します。前回のロジカルシンキング編コラムではこれについて、上の階層(=テーマ等)から「掘り下げて」、下の階層(=詳細内容)へと話を続けることを中心にお話ししましたが、本来、縦方向思考の原則を考える際には「上下方向」のどちらについても考慮する必要があります。すなわち「上の階層→下の階層」だけでなく、「下の階層→上の階層」についても、論理的な繋がりを考慮する必要があるということになります。

縦方向思考に従って実際に考えを進めていく際には、

・なぜ(Why)?
・(だから)なに(So What)?

この2つのキーワードを活用することがポイントとなります。

「なぜ?」と考えることは、階層構造における「上→下の方向」に従って考えを掘り下げる際に役立ちます。例えば、スマートフォンが現在、非常に速いスピードで普及してきていますが、「スマートフォンは売れる」という点をテーマに「なぜ?」と考えてみましょう。そうすると、「アプリが便利だから」「画面が大きくて見やすいから」「実際に使用している人が増えているから」などの「理由=一つ下の階層」をイメージすることが出来ます。

また、「なぜ?」の派生として「どのように?」と考えることも掘り下げの際には有効です。前回のコラムで採り上げた例の一つに「店舗に対する新商品の提案」がありました。この際は「どのように?」と考えることで、例えば「売上メリット」「コストメリット」「納期メリット」をアピールすることで提案に繋げるという「階層の掘り下げ」が可能となります。このように「なぜ?」「どのように?」と考えることで、階層を上から下に「掘り下げる」ことが可能となります。このことを「トップダウン型アプローチ」と呼びます。

逆に「(だから)なに?」と考えることは、階層構造における「下→上の方向」に従って考えを「まとめ上げる」際に役立ちます。先程のスマートフォンの例であれば、「アプリが便利だから」「画面が大きくて見やすいから」「実際に使用している人が増えているから」という話が先にあったと仮定し、そこから「(だから)なに?」と考えることで、どのような意味が導出されるかを考えることになります。この際は「だからスマートフォンは売れる」というように、話を「まとめ上げる」ことが可能となると思います。

もう一つの例でも同様に「売上メリット」「コストメリット」「納期メリット」に触れることについて「(だから)なに?」と考えることで、「新商品の提案が可能になる」と「まとめ上げる」ことに繋がるイメージをつかんでいただけると思います。このように「(だから)なに?」と考えることで、階層を下から上に「まとめ上げる」ことが可能となります。このことを「ボトムアップ型アプローチ」と呼びます。

まとめますと、「なぜ?」と「(だから)なに?」という2つのキーワードをいつも意識し、トップダウン型アプローチとボトムアップ型アプローチのそれぞれを併用することで、縦方向思考を効率的に進めることが可能となります。言い換えれば、


縦方向思考とは「掘り下げ」と「まとめ上げ」の思考方法である

と定義することが可能です。

「なぜ?」と考えて掘り下げを行い、「(だから)なに?」と考えてまとめ上げることは、論理的な思考を行う上での最も基本的な方法の一つです。是非「なぜ?」「なに?」といつも自問自答し、考えを深める練習をしていただければと思います。

(担当:佐藤 啓